エヴォリミット

 一言で表すなら、リミットオーバー・アクセルシラヌイである。


●制作スタッフは『あやかしびと』『Bullet Butlers』と同じ。内容も例によって超能力バトルもの。「そろそろ変化があってもいいのでは?」と思いつつ進化は遂げる。

●舞台はテラフォーミングで地球に近い環境となった火星。不知火義一と一条雫が百年の眠りから目覚めたのは、奇跡の鉱物「パッチ」の恩恵により皆が超人へと変化を遂げた世界だった。人類の敵となったロボットの軍団と、そして超人をも凌駕する人型の災害――それら「試練」を前に、不知火は進化の階段を昇り続ける。

●今作も脚本は相当のボリュームで、時間のない人間にはゲームプレイ=試練。メインヒロインのルートが最終プレイ固定なのも『あやかし』から変わらない。↑の超人とは、例えるなら『あやかし』の人妖を破格にパワーアップさせたのが世界水準になったようなもの。火星人おかしい。

●超能力バトルの終着点とでも言うべき作品。より強い敵、その敵を打ち倒せる新たな力、その力でも倒せない新たな敵――強さのインフレが際限なく生じる少年漫画的展開、その行き着く先を示す一つの好例。なお同様にパワーインフレが極まった『神咒神威神楽』とはメインヒロインの声が同じだったりする。

●バトルものでありながら生命の危機が少ない。大怪我を負おうとも自動的かつ驚異的な速度で回復が開始されるパッチの万能性は冗談の域。こんな反則アイテムを一般人でさえ標準装備している。火星人おかしい。

●生命の危機に陥ることで出現する「進化の階段」はパッチ以上に狂った設定。ピンチに対応し出現、階段を昇ると進化を遂げている。……危機的状況において新たな能力に目覚めるのはお約束にしても、覚醒が約束されては緊張感など皆無。ただ進化すればいいというものでもないだろうに、限界進化を超越する最終シナリオですら結果オーライなのは論外。

●際限なき強さの獲得、急激な進化に大した問題が生じないのは構成の時点で間違っている。しかし問題がなかったのが問題なのであって、問題があれば問題なかったとも思う。……って、ええいややこしい! つまり「進化に対するデメリットの描写が不足していた。それに見合う深刻な対価(退化)を支払うべきだった」という話。

●過去作と比べ濡れ場が増えた。バトルものには致命的な難点を抱えた反面、18禁ゲームとしては真っ当に近くなっている(あくまで比較的)のは面白い。エロスは進化しバトルは退化。進化と退化は同義であるという証明に違いないわけがない。


 ――備考。

●初回限定版の特典DVD「火星オーバードライブ」にはピクチャードラマや壁紙、ムービー集などが収録されている。十七人にも及ぶ登場人物たちのシステムボイスもあるのだが……本編で濡れ場のない面子(幼女とか)は、ここで補完されている。盲点で笑った。

●いわゆる燃えゲーであっても、本当に燃えるのは珍しい。主人公が炎を操る超能力を有する作品は珍しくないにせよ、あまりに主人公然とした属性だからか昨今は逆に少ない気もする。加えて姓が不知火で舞台が火星。あらゆる面においてファイヤーな作品。


 推奨度――B。


エヴォリミット

うたてめぐり

 一言で表すなら、キラーイジーンである。


●ジャンルは「恋とバトルの学園アドベンチャー」。ご都合主義に満ちた設定により、バトルは「深夜の学園」にほぼ限定される。異常なほど広大な敷地。……これだけ広いと通信手段は重要なはずなのに、シナリオ上の都合か携帯電話を全く使わない日高皐月は、FLAT主人公にあるまじきバカさ。

●脚本家の筆力に問題あり。とりわけ第二・三章は不足が目立つ。一人称視点と三人称視点がコロコロ変わるテキストは、小中学生の書いたライトノベルめいている。地の文で「俺は~」と記された直後「皐月は~」などと出るのに失笑。

●テキストとCGの不一致……と呼ぶにもおかしい点が多々ある。例えば瞳が赤いヒロインがCGによって青くなったり、主人公に続いて隣に座ったはずのヒロインが壁側(手前ではなく奥)だったりと。そも第二章の題は「魔剣の巫女と黒の遣い魔」だけれど、黒いと思えないのは自分だけ? 漆黒の鎧……そう見えなくもないが……。

●あまり黒く見えない「黒い獣」について。

巨大な体躯からは想像もできない俊敏な動き、常人では目で追う事すら難しい圧倒的な速度で、獣の牙が俺に迫る。
目の前には、絶対的な“死”という名のリアルが突きつけられていた。
わずか数秒後には、俺の身体は物言わぬ肉塊と化すだろう。

 さして離れてもおらず「常人では目で追う事すら難しい圧倒的な速度」のはずなのに、なぜか数秒後。この物語には「即死」の概念がない気がしてならない。瀕死の人間がやけに長く末期の言葉を遺すのも特徴。

●文も絵も褒められる出来ではないものの、曲はレベルが高く挿入歌も多い。『うたてめぐり』だけに歌には力を入れたのかもしれない。オリジナルサウンドトラック目当てにショップめぐりをするのも手。

●各章のセレクトを除いて選択肢はなし。一つの章を終えることでプロローグ後に新たな章が選べるようになる。プロローグのスキップ機能がないのは少々不親切。

濡れ場が三つしかないのもフルプライス作品としては厳しい(『キラークイーン』は二千円しないロープライス作品)。なのにシーン鑑賞画面のセレクト数は二十七もあり、大半はクリア後の声優コメントで埋まる。何かと似ている母親役のお二人には全面的に同意。

●ヒロインは三人。それぞれ深く関係するサブヒロインも存在する。サブ三人は「いかにも攻略できそうなのに無理」という、例の歓迎されないお約束。……その六人中、第一のヒロインである織姫恋花の姿だけがパッケージにないのは謎。


 ――備考。

●恋花(カレン)の謎は、全て「大人の事情」に終始するのが悲しい。わざわざ制服に着替えてから濡れ場に入ったり、プロモーションムービーでは銃を構えているのに本編ではナイフばかりだったり……。第一章では一度たりとも撃たなかった。よってコレは嘘。プロモと製品版のムービーを比較すると、明らかなヒロイン格下げが発生していて泣けてくる。

●同日発売の『エヴォリミット』とは何かと共通点が少なくない。最たるものはコレか。

「私が望む真の変革とは、人類をより高みへと導くことにあるのだ」
「人は乗り越えなくてはならない障害を与えられた時、初めてその真価を発揮する」
「ならば与えてやればいい。より大きな困難を、種の存亡を賭けた戦乱を」
「終わりなき闘争の果てに、人類は更なる進化を見るであろう」

「進化」がテーマのあちらとは違い、こちらの唐突ぶりは相当なもの。まずシナリオライターを高みへと導いてください。


 推奨度――C。


『うたてめぐり』はじまります。

LEGEND SEVEN ~白雪姫と7人の英雄~

 一言で表すなら、「残念すぎるっ!!!」である。


●『Trample on "Schatten!!" ~かげふみのうた~』と同じメーカー……と言っていいのかどうか(TAIL WINDは解散してしまったので)。同様に変身ヒーローもの。

●仮面ライダーだった『Schatten!!』の次は、スーパー戦隊シリーズのオマージュ。パッケージ裏にも「童話×戦隊ヒーローの科学融合!」とある。隠す気など絶無。個々の色を持つ英雄たちが結束して戦う。

●前作の「影」に続くのは「鏡」。昔の特撮作品『ミラーマン』を連想しつつ……より近いのは『ボイスラッガー』か。今作『L7』には「熱い奴が勝つ」というトンデモ法則が存在し、通常ただのお約束でしかない「叫ぶ」行為にも意味がある。いい意味でB級なのも同様。

●メインヒロインである白雪姫だけでなく、サブヒロインの扱いもそう悪くない。これは前作より改善された点。……であるのに、そんなヒロインズよりも敵側に魅力を感じる。ヴィジョナーズの面々で魅力がないのは、手抜きデザインのイノーガニクを除けば、せいぜいカトプトロンくらい。三流にして三下。

●「マルチサイトビジュアル」がないのは惜しまれる。原画担当が三人もいるためミスマッチな印象を受けるのもマイナス。脚本はボリュームが格段に増えたものの、素直に大作になったとは評しがたい。

●やはり絵の数が明らかに不足している。そのせいかテキストとの矛盾点も多く生じてしまった。冗談のようなミスも枚挙に暇がない。どう見てもピンク色の服なのに、

黒いメイド衣装のヒナタ。
俺はそれを見て呆気に取られるしかない。

 こんな誤字さえある始末。俺はそれを見て呆気に取られるしかない。とりわけヒナタ編はミスの宝庫となっていて、

誰もこの場で悲観する必要はない。
まだ何も終わっていない。
全ての戦場は結果で出す。

 ……「全ての結果は戦場で出す」では? こうした残念すぎる誤字の数々は悲観するべきだし終わっていた。

●ちょっとしたバグがあるのでアップデートパッチを当てたほうがいい。が……パッチが適用されたことを確認する手段がない。主人公の持つ剣はバージョン情報が表示される変則武器。「ゲームに必要な機能が武器に備わっている」という珍しいケース。

●恒例の「半脱ぎシステム」が廃された。代わりに設定で「精液を中出しにする」が加わる。これは濡れ場の定番選択肢「中出しor外出し」のオートセレクト機能。チェックを外すと外出しになる。シーンの回想からも差分回収は可能。


 ――備考。

●予約特典は「妄想LOVEアペンドディスク」。内容は題まんまなので割愛。特典が不要なら定価より二千円ほど安いダウンロード販売も。……ただDL価格としては安値でもなし。なまじ半額以下で中古品が売られていたりもするだけに。

●この物語は、ツ(ブヤ)イッターが重要な役割を果たす。そのためかキャラクターのアカウントがあったり、また専用アイコン&壁紙もダウンロード可能。アイコンの変更時には「幻想纏衣!」と叫ぶツイートするのを忘れないようにしたい。


 推奨度――B。


グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-

 一言で表すなら、「トラウマバスターズ! なのよさ!」である。


●フロントウイングが十周年を記念し制作した化け物タイトル。原画担当を「渡辺明夫×フミオ」とし、六つのボーカル曲も人気の歌手がそれぞれ歌っている。過剰に力が入っており、萌えゲーアワード大賞での金賞獲得も納得。

●脚本量も圧巻。ただでさえボリュームがあるのに、シーンの流れが単調なため(必ずと言っていいほど主人公の観念的なモノローグから入る。起承転結がしっかりしすぎている感あり)余計に長く感じた。

●各ヒロインにハッピー&バッドエンドは一つずつ。榊由美子以外のバッドは悲惨なもので、なぜそんな結末を用意したのか理解に苦しむことも多々あった。肯定的に受け入れられるのは……周防天音シナリオくらいか。

●ハッピー・バッド共に最も認められなかったのは入巣蒔菜シナリオ。シーンタイトルも「セカイ樹の種」ばかりで(天音シナリオの「エンジェリック・ハゥル」を上回る最多)適当な印象を受けた。ただ蒔菜シナリオのみ回想シーンが短く、その点は評価したい。他のヒロイン長すぎ。

●無駄に長いにもかかわらず、何かと消化不良感も強い。風見姉弟を中心に語られぬ事柄が散見し、続編の『迷宮』『楽園』にて補完される構成となっている。……フム(主人公の口癖)、最悪に近い商法だという自覚はあるのだろうか?

●続編を含むと、大抵の女性キャラに濡れ場あり(本編開始時には故人である、実の母親や無関係なバスケ部員にも!)。なお一部の例外を除き、ほぼ全て主人公に股を開くシチュエーション。だいぶ無理があった。

●システム面が充実しており、システムボイスは七人と一匹の猫より選択可能。なにゆえ畜生がいるのかと思えば、そんな「システムボイスの意外担当」は続編にもいた。唯一マシなのが『楽園』。逆にイカれているのが『迷宮』。

●おまけの豊富なバリエーションも特筆に値する。シーン回想(濡れ場を除く全般)とHシーン回想、BGM・ムービー観賞も当然のごとく備え、うれしいのはシークレットコンテンツの存在。システムボイス・壁紙・アイコンがダウンロードできる。


 ――備考。

●大ヒットという俗な目標が掲げられ、その実現は発売前から半ば確定していた。そして発売後は半年も経たずにPSPへの移植が発表されたという……。失敗するに違いないと見ていたテレビアニメ版(パンツ多し)も、大胆なストーリー構成で意外な良作となっている。原作よりいいと感じる箇所も少なくなかった。

●ヒロインの物語より主人公の過去編のほうが面白いのだけれど、しかし過去編のある『迷宮』は他がひどい。しょーもない濡れ場と、それ以上に吐きたくなるほどつまらないショートショートシナリオ集。また『楽園』は過去編の後日談がメインとなるものの、無駄に満ち満ちた超展開のオンパレードはギャグでしかない。ここで推奨度がワンランク下がった。


 推奨度――B。


『グリザイアの果実』 2011.2.25発売予定

真剣で私に恋しなさい!

 一言で表すなら、マジ濃いゲーである。


●タイトルの真剣は「マジ」と読む。パッケージなどの表記では『真剣で私に恋しなさい!!』となっており、感嘆符が一つ多い。

●ジャンルは「武士娘恋愛ADV」。ヒロインが全員武士娘。武士レベルを通り越してウルトラマン(タロウ)級の強さを有する少女まで。自爆技=ウルトラダイナマイト。

●脚本家は、テレビアニメ化もされた『つよきす』『君が主で執事が俺で』で知られるタカヒロさん。……アレ? なんで消されたの? アニメ化されて……アレ?

●小ネタの多さは相変わらず。ヒロインと恋仲になるとバカップルと化すのも相変わらず。恥ずかしいのが苦手な自分は放り投げたくなった。「タイトルの時点でバカだし恥ずかしいじゃないか」そりゃそうだ。

●前述の旧作ネタ、声優つながりネタ(多すぎるガンダムがカオス)が山ほど。比較的メジャーどころが多いものの、そうしたパロディの嵐を楽しむには一定以上のオタク知識が要求される。

●登場人物が無駄に多く、その多くが無駄に強く、無駄に声優陣が豪華。唯一ボイスのない主人公まで無駄に超絶倫。良くも悪くも無駄ばかりのゲーム。

●MEISEKIな頭脳が炸裂した『きみある』に続き、スーパー九条信乃タイム。本家スーパーヒーロータイムでは『侍戦隊シンケンジャー』が近いか。

●松風が素晴らしい。個人的には源忠勝・九鬼英雄・大串スグルと合わせて今作の萌道四天王。まゆっちが人気投票で一位になったのも松風効果に違いない。あと尻。


 ――備考。

●声優陣は確かに豪華なのだが、明らかに場違い――どころか声優でないはずの人も。京ルートの選択肢「告白を受け入れるor告白を受け入れない」で後者を選ぶと、いつの間にか車輪の国に逝っている。新作も書かずに何してるんだろうね、あの人。

●前作同様テレビアニメ化された。一話で川神大戦を描き、サプライズまで用意する大胆な構成。二話からはギリギリ(アウト)なエロ系ラブコメ路線を展開した。……その路線で最後まで進んだほうが、まだマシだったのではないかと。


 推奨度――A。


真剣で私に恋しなさい!

リトルバスターズ!エクスタシー

 一言で表すなら、「さらば諭吉ぃっ!!」(購入費)である。


●『リトルバスターズ!』にヒロインや濡れ場などを追加したタイトル。勘と耳のいい人間であれば、最初から「これは18禁版が出るな」と予想できてはいた。さすがに「エクスタシー」は予想外にも程があったが!

●濡れ場には興味がなかったのに、無印で一番好きだった二木佳奈多がヒロインに昇格ということで……「Key汚い!」と毒づきながらプレイした。彼女のシナリオを追加したためか設定が少し変更されている。「バスに乗っていたか」は重要なポイント。

●テーマは友情。ヒロインより男友達に重きが置かれた側面さえあり、Keyの過去作品と同じく家族との関係性も描かれる。例外は姉御こと来ヶ谷唯湖のルート。……追加シナリオはどうだろう。猫は家族扱いでいいの?

●「バッティング練習」「バトルランキング」を始めとした数々のミニゲームが特徴。キャラクター攻略には影響しないので、基本としては好きに進めていい。ただ新規ヒロインの一人、朱鷺戸沙耶のルートだけは別。「ゲーム」が軽視できない要素となる。

●「スクレボウォッチを手に入れてマスク・ザ・斉藤を倒す!」(取得は必須でもないけれど)や「沙耶をMにして時風を倒す!」など、ミニゲームを極めようとするとプレイ時間は倍加もありえる。直枝理樹・棗鈴の二人は周回プレイを重ねるごとに成長(パラメータが上昇)し、物語を進めるほど野球の試合やバトルランキングに勝ちやすくなる。ミニゲームは後回しで進めたほうが効率はいい。

●取って付けたような……もとい、事実として取って付けた濡れ場で流れるBGMが強烈。「エクスタシィー、エクスタシィー、シャーラーラー、エークスタシィ~」は誇張抜きで耳を疑った。曲名はまんま「Sha La La Ecstasy」。コーラスは霜月はるかさん。……無駄に豪華だなヲイ!?

●新規ヒロインや追加されたミニゲームに関心がなくとも、無印よりこちらをプレイしたほうがいい(全年齢対象の移植版という手も)。濡れ場以外も無印から加筆された箇所があり、とりわけクドシナリオは極端なほどの加筆量。……スピンオフの『クドわふたー』といい優遇が過ぎやしないか。

●各ヒロインの脚本は執筆者の差異が目立つ。続く『Rewrite』では一人だけ明らかに別のゲームと化していたから(このはなのなく頃に)……それに比べると大した差でもないか。


 ――備考。

●インターネットラジオ「ナツメブラザーズ!」が配信されていた。最初「十回くらいは続くかな?」と思っていたら、なんと百七十回まで。途中リニューアルしつつ三年半近くも続いた。音泉で一度も欠かさず聴き続け――その時間はゲーム本編の何倍になるのか考えるのも恐ろしい。

●テレビアニメ『Angel Beats!』が放送されたとき、今作を連想した視聴者が続出。ファンサービスも仕込まれている(フィッシュ斉藤とか)。……しかし沙耶は出る物語を間違えたとしか思えないな! 沙耶シナリオが好きorクリアしていない人は↓を反転しないでください。

 朱鷺戸沙耶というキャラクターそのものは好き。それは断っておくとして。――この物語において新規ヒロインとしたのは意味がわからなかった。『AB!』なら全く問題ない。だが『リトルバスターズ!』は理樹と鈴が徐々に成長していき、やがて一人の死者も出さず皆を救うことにカタルシスがあったのでは? そこに「救うことができないヒロイン」を後付けする必要がどこにあったのかと問い詰めたい。……まさか時風を倒すことで見られる、あの後味の悪いエンディングがハッピーエンド扱いとか言ったらディスク叩き割るぞ。いい加減かわいそうな少女が死ぬか消えるかの展開でプレイヤーを泣かせようとする安直な手法は飽きたんだよボケ!

 ……書かずにはいられなかった! なお『AB!』の二年後、本作もアニメが放送開始。かなり質の高い映像化だったことを述べておきたい。


 推奨度――A。


DEAEDROPS

 一言で表すなら、スガショー・ショータイムである。


●『キラ☆キラ』『キラ☆キラ カーテンコール』に続く、OVERDRIVEの「青春恋愛ロックンロールADV」。主人公は海外のオーケストラで活躍する音楽家の青年。しかし楽団での居場所を失い帰国、ライブハウスに住み込みで働くことになる。そこで出会う新たな音楽とは――?(……いや、まあロックに決まっているのだが)

●過去作と異なるのは、音楽が「仕事の道」でもあり、それが大きくクローズアップされている点。主人公は音楽の世界で生きてきた人間。ヒロインたちも温度差こそあるものの、その道で生活していこうと目指す。成長物語としての傾向も強い。

●目当てのヒロイン寄りに選択肢を選べば攻略できる、オーソドックスな好感度判定タイプ。バッドエンドは存在せず、後味の悪い結末にはならない。ヒロインが死ぬことはないので安心していい。

●バッドエンドはないにしても、報われない努力とて多数。山があれば谷もあるのは当然として、山に続く山山山。ようやく谷があったと思えば奈落に叩き落される始末。それでもより高い山になお挑み続ける。芳谷律穂シナリオはそんな展開。ひたすら根性で突き進む、その愚直な姿勢は嘘臭いほどの運命を引き寄せる。

●メインヒロインのルートには過去作のキャラクターたちがゲスト登場。バンド作品ならではのラストシーンも高く評価したい。『DEARDROPS』の魅力の大半は律穂シナリオにある。

●例によってボーカル曲が十曲もあり、さすがに多い。ただ律穂シナリオを除けばエンディングで流れる程度のもの(共通部分は除外)。十曲でも足りない感があるのは贅沢か。とりわけ桜井かなでシナリオは、もう一曲か二曲は欲しかったところ。

●立ち絵の不足も気になる。服装のバリエーションが夏服と冬服の二つしかなかったり。かなでの妹、ちかが特に顕著。屋内でマフラーを巻いているのは、まあ百歩譲っていいにしても……ゴールデンウィークが過ぎてもマフラー姿なのはフォローできない。

●ヒロインはボーカルが二人に、ギターとドラムが一人ずつ。前者に比べ後者は脚本も短く扱いが数段劣る。「『DEARDROPS』の魅力の大半は律穂シナリオにある」と断じた理由はここで、後者の二人は比較対象にさえならない。かなでもDEARDROPSに属さないため除外。つまり律穂しかいない。


 ――備考。

●『キラ☆キラ』の比ではないヒロイン格差は、このゲームの不満点の一つだったのだけれど。PSP移植版では改善されている。サンプルCGを見た瞬間最初からやれよォォォォォ!と叫んだ。

音楽を題材にしている『DEARDROPS』だからこそ、楽曲には手を抜いておりません。
既存ルート+追加ルートのエンディング曲、計6曲を新たに書き下ろしました。
その中には、待望となる「DEARDROPS」ボーカルの芳谷律穂と桜井かなでのデュエットソングを収録。
二人が奏でる旋律をプレイして堪能してください。

「待望となる」って……わかっているなら最初からやれよォォォォォ! やはりツインボーカルであればデュエットは必須。

●↑に比べれば全くどうでもいいことなのだが、ストーリー紹介では「ヴァイオリン」となっているのに、作中だと「バイオリン」なのは疑問だった。対して移植版ストーリー紹介では「バイオリン」。ファンディスクでも「バイオリン」。個人的には「ヴァイオリン」派。


 推奨度――B。


OVERDRIVE 5th Project -DEARDROPS-

ひまわり(同人ゲーム)

 一言で表すなら、これは部活である。


●家族を失い、その記憶さえも失ってしまった主人公・日向陽一。陽一は「宇宙部」の部員として、部長の雨宮銀河と共にロケットを作る日々を送っていた。彼らはある日UFOを目撃する。墜落したそれには少女が乗っており、陽一と同じく記憶喪失に陥っていた……。

●ジャンル名は「ロリっ娘宇宙人同棲アドベンチャー」。宇宙から来たロリっ娘ことアリエスと共に暮らす(同棲する)。そのままなのにジャンル詐欺に等しい。例えるなら『新世紀エヴァンゲリオン』を「ママの体を操作するイケない少年のドキドキ☆スクールライフ」と称するような詐欺ぶり。

●語弊のないジャンルに直すならSF。約四十年後の近未来を舞台に、物語の主軸となるのは宇宙開発と未知のウイルス。確かにロリっ娘たち(ルートによっては姉が増える)と同棲はするのだが……最終シナリオのヒロインはロリですらない。

●意外なほど本格派のSFシナリオは同人作品の標準を大きく上回る。商業作品と比較しても全く遜色がない。実際にコンシューマゲーム機にも移植された。ドラマCD化やコミカライズもされているのは高い評価ゆえ。

●理不尽なバッドエンドが非常に多いのも特徴。アクア編はその最たるもの。ひたすらツンデレ少女の機嫌を窺うルートと呼んでも過言ではなく、恐怖のバッドエンド「摘出」が存在するのもアクア編。アクマ編の間違いでは?

●一見幸せそうな結末であろうと、どこかで必ずケチが付く(バッドエンドに限らず)。外伝小説二冊を含め大団円とは無縁で、ハッピーエンド至上主義は手を出さないほうが賢明。ここまでになると脚本家の趣味と思うしかない。


 ――備考。

●アクア編の後日談『ひまわり アクアアフター』も発売されている。千円で買える全年齢作品。「一見幸せそうな結末であろうと、どこかで必ずケチが付く」――アクア編のケチは本編外に存在するから悪質。アクマ編の間違いでは?

●PSP移植版は外伝小説も収録。濡れ場を重要視しないのであれば移植版のほうがいい。またDXパックには陽一にも声が加わったPS2ソフトが同梱されている(PSP版は主人公を除きフルボイス。PS2版は主人公を含むフルボイス)。……限定版同梱物が別機種のソフトというのは、脚本担当が「謎仕様」と語るほどのレアケース。

●レア同梱物など複数の特典を収録したDXパックは、しかし通常版より三千円高い。ボイス不要なら同人版を推奨。千五百円せず買えるのは移植版にはない強み。入手できない場合には全年齢版のダウンロード販売もあり。そのiPhone版が最安。

●悪名高いRegripsの『ひまわり』とは無関係。当然システム面にエキセントリックな大問題を多々抱えるようなこともなく、むしろ同人ゲームとは思えないほど充実している。『ひまわり hi・ma・wa・ri』や『ひまわり』(ぶらんくのーと)などと表記すれば誤解もないか。


 推奨度――A。


キラークイーン(同人ゲーム)/シークレットゲーム-KILLER QUEEN- DEPTH EDITION

 一言で表すなら、主人公と会えなければ早々にキルされる不人気ヒロクイーン(ヒロイン+クイーンの造語)が、ヒロイン中メンタル最強を誇るゼロ距離ガンナーに成長していくゲーム内ゲームである。


●『キラークイーン』(以下「同人版」)は、閉鎖された施設で十三人の男女が生存を賭けたサバイバルゲームを強いられる物語。彼らに付けられた首輪は制限時間を過ぎると爆発する。個別の条件を満たし外さない限り生還できない。かの『バトルロワイアル』のオマージュ。

●いかにも同人作品らしい悪趣味さだったのに、何を血迷ったかPS2に移植された。それが『シークレットゲーム-KILLER QUEEN-』(以下「移植版」)。ただの移植ではなく、その内容は大きく異なる。二部構成だった同人版に対し四部構成。ヒロインも二人から四人に増えた。変更点は多数。

●移植版をPCに逆移植したのが『シークレットゲーム-KILLER QUEEN- DEPTH EDITION』(以下「逆移植版」)。性描写や新規シナリオが追加されている。他に類を見ない特徴だった「BETシステム」が省かれ、ゲームとしての面白味は減少してしまった。追加部分は蛇足とも取れる。詳しくは後述。

●どのバージョンであっても、全体的に好みが別れる内容。あまり人を選ばないのは音楽面くらいか。遊女さんのボーカル曲はどれもいい。同人版からのファンとしては「トラワレビト」を一番に推す。

●同人版と移植版(逆移植版)の差異は山ほど。同人版で根幹の設定だった「首輪が爆発する」からして変更されている。登場人物も一人(二人か?)が別人と化した。その変更を逆手に取り、同人版を知っている人間にのみ機能するミスリードもあるのは面白い試み。……同人版の彼女が好きだった場合には複雑やも。

「すごーく昔から私のことを知ってる人は、ちょっと物足りなかったかもしれなかったよね、ごめんね」

 それをキャラクターに言わせるのはNGだろう。……本編クリア後は、こういう台詞が飛び出すオマケあり(逆移植版)。NGボイスコレクションも。

●脚本を担当された健速さんは、逆移植版には不参加。逆移植版の追加シナリオも文体を似せようとしている努力は察せられるものの……節々で「やっぱり別人だな」と思えてしまう。新たに加わった北条かりんルートの後味がよろしくないのもマイナス。文章にミスも見受けられた。とりわけ笑えたのが、

「落とし穴……こんなものまであるの!? 御剣達は無事なのかしら……」

 いかにも初見のような台詞。知らないはずがないのに。

 麗佳と文香は戦闘禁止が解除された後に出会った。
 罠にはまり落とし穴に落ち、穴から出られずにいた麗佳を助け上げたのが他ならぬ文香だったのだ。

 選択肢を設けシナリオを分岐させるなら、分岐前のテキストをよく確認すべき。麗佳さんは四ルート中、三ルートで落とし穴に落ちる、その道のエースだぞ!


 ――備考。

●追加要素に興味がなければ、上記の理由から逆移植版より移植版を推したい。初回限定版にはドラマCDが同梱。我らが綺堂渚のトラウマ過去編となっている。「かりんルートがああなったのって渚さんが油断したせいじゃね?(笑)」とかぬかす輩は首輪したまま表に出ろ!

●逆移植版には予約特典でキャラクターボーカルCDがあった。歌うのは麗佳さん(の中の人)と渚さん(の中の人)。前者はボーナストラックのかれんバージョンが一部ブッ飛んでおり(なんだよ「凍てつくこのお金」って……)後者はなぜか作詞も担当。声優ファンには推奨度が高まる。

●同人版ならではの魅力として、二千円しない低価格が挙げられる。恐怖のJOKER遣い「皆殺しのナンバーナイン」を拝めるのは同人版だけ! エロリ好きには推奨度が高まる。

●続編『シークレットゲーム CODE:Revise』も発売された。群集劇のスタイルがサバイバルゲームに上手くマッチしている。舞台は隔離された廃村となり、各自に配布されたPDAは全て特殊機能を有する。首輪の解除条件も全く違い、途中で変化することさえ。ラストシーンに驚かされもするが、シナリオボリュームの不足がネック。18禁。


 推奨度――B。


「シークレットゲーム-KILLER QUEEN-DEPTH EDITION」

Dies irae -Also sprach Zarathustra-/Dies irae -Acta est Fabula-

「スチームパンクシリーズ(ライアーソフト/桜井光)」以来の例外形式。経緯が特殊でややこしいため。
 過去に紹介したタイトルでは『おたく☆まっしぐら/最果てへ☆まっしぐら』が近い。そちらにまっしぐらするんじゃない!

 簡潔に説明すれば「トンデモ超能力を発揮するオカルトアイテムを持った旧ナチスドイツの超人たちが現代に現れ、その騒動に巻き込まれてしまう物語」。
 荒唐無稽ここに極まれりなオカルトバトルが展開され、18禁ゲームよりも少年漫画・ライトノベル的な印象を受ける。
 この点は同メーカーの『PARADISE LOST』と同じ。脚本・音楽も正田崇さんと与猶啓至さんが引き続き担当と、ファンなら逃せない作品。
 自分も期待を寄せていた一人なのだけれど……。これより「怒りの日事件」が開幕する。

 発端は二〇〇七年に発売された(この時点で発売日延期を重ねていた)『Dies irae -Also sprach Zarathustra-』。
 旧版、無印版、2007版……通称は多くあるものの、以後は最もわかりやすく「不完全版」と呼称。
 この不完全版、発売当日に公式サイトから一部サンプルCGが削除され、商品スペックの表記も修正された(容量半減)。
 それもそのはず、不完全版には攻略ヒロインとされていた四人中、二人のルートしか存在していなかったのだから!
 一人と思われていたシナリオライターも、まさかの七倍。サブライターが六人も外注で起用されていた。
 ライター目当て、ヒロイン目当ての購入者が怒るのは自明――騒動に発展し、発売から間もなく「『Dies irae』についてのお知らせ」が掲載されることに(現在は削除)。

『ディエス・イレ』をご購入頂きまして誠にありがとうございます。
サポートの方に、ご意見ご要望等多数お寄せ頂いておりますので、そのお答えをさせて頂ければと存じます。

開発当初におきましては、伝奇性の強いタイトルである為、数多くのルートを作成する予定はございませんでした。
発表後、キャラ毎の人気が高くなって参りましたので、そのご期待に応えるべく、各キャラルートを増設すべく製作を進めておりました。
しかし、弊社の力量不足により膨らむルートをまとめきることができませんでした。

その結果、当初の基本に立ち戻り、メインルートのみに集中し、このような形で完成させることとなった次第です。


また、製作に十分な余裕を持たせられなかった為、印刷物におけるHDD空き容量表示の修正が間に合わなかった事、結果として使用できなかったCGを既に公開してしまっていた事など、不手際が重なり申し訳ございませんでした。


螢、玲愛を始めとした他ルートはこの後も製作を継続させて頂きます。
発売時期を現時点では明らかにすることはできませんが、他ルートの完成した新たな作品作りをさせて頂く所存です。

またその新作の発売の際には、本作品を購入された方には追加パックとして購入できるようなエクステンションパッケージも準備させて頂く所存です。

また新しい事が決まり次第ご報告させて頂きます。

この度はお騒がせを致しました。制作一同、誠心誠意努力して参る所存です。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

株式会社Greenwood 代表取締役 服部道知

 ややこしい話になったのはここから。
 上記の「追加パックとして購入できるようなエクステンションパッケージ」……これにより多数の「○○版」が存在することになってしまった。
 なお未完全版を買ったユーザーは、パッチ版を無料でダウンロード可。購入する必要はない。

『Dies irae -Also sprach Zarathustra-』――未完全版。
『Dies irae -Acta est Fabula-』――完全版(パッチ版と変わらず)。

 完全版で留意すべきは『die Wiederkunft』(新装版)と『Scharlachrot Grn』(アベンド版)。
 前者は未完全版に収録されたマリィ・香純ルートに加筆修正を加えたもの。
 後者はそれに螢・玲愛ルートを追加するアベンドディスク(単体ではプレイできず、新装版が必要)。
 つまり「新装版+アベンド版=完全版」になる。これから買うのであれば完全版一択で問題なし。
 ――こんなものかな。では本題を。



 一言で表すなら、ユーザー怒りの日(不完全版)と、騙りなき超越の物語(完全版)である。


●「ご都合主義」が褒め言葉と化している物語。あまりに際立つ主人公補正は、それだけに何者かの作為を感じさせる。謎の既知感から外れるために既知外キチガイの水銀を倒す必要があるとはこれいかに。

●完全版では主人公の声が追加。フルボイスで先割れスプーン祭りを堪能できる(水銀はシャラップ!)。音楽も増えオープニングムービー(主題歌)も新しくなった。……ただ主題歌に関しては未完全版のほうが好みではあったか。

●完全版の脚本は、酷評されまくった未完全版とは見事なまでの別物。公開されていたのに使われなかったCGも使用されており、新規で用意された絵も多数(それでもやや足りない感はあるものの、演出でフォローされている)。

●完全版のシナリオ修正について。六章の戦闘シーン前後からは大幅にリライト。設定の変更は枚挙に暇がなく、マリィ・香純ルートも生まれ変わった。――が、だ。大筋は変わらないのでデジャヴるんだよ!(ルネッサンス山田ボイスで)

●脚本の修正に伴い新キャラクターも登場。既存の敵は全体的に強化されまくっている。あまり強さが変わらないのは、序盤で脱落する彼と香純くらいか。

●完全版で新たに追加された問題点があるとすれば、初回起動時にオンライン認証を要する手間。認証回数は八回までに制限されており以降は有料。公式サイトの入り口に「不正コピーによる著作権侵害について」などとリンクを張っているだけあって、不正には厳しい目を向けている模様。詐欺に近い不完全版を是としたメーカーとは思えない姿勢。


 ――備考。

萌えゲーアワード大賞のBGM賞で金賞、シナリオ賞でも銀賞に輝いた完全版。累計五万本突破の感謝キャンペーンパッケージも発売された。別名「ルサルカ大勝利パッケージ」。ヒロインでさえなく、主人公からも嫌われるキャラとは思えぬ大勝利。

●マリィルートの続編(正確には玲愛ルートに移行できなかった可能性を描いたIFストーリー)が『神咒神威神楽かじりかむいかぐら』。何やら覚えのあるBGMが流れるなと思ったら、見覚えのある面子が変わり果てた姿で登場する。さりとて悲劇的な後日談とも一概には言えず、例としてザミエル卿などは脚本家の寵愛を受けまくっている。対してマリィファンは憤激すること確実。そうした点では人を選ぶか。

●ご都合主義は『Dies irae』以上、前作で極まったと思えたパワーインフレすらも上回る『かかか』。『PARADISE LOST』ファンに対しても推奨度が大きくプラスされる。「アクセス――我がシン」が再び!

●不完全版を購入+ユーザー登録していると騒動に対するフォローが受けられた。前述のパッチ版無料ダウンロードに加え、完全版の非売品インストールディスクやファンブックが届けられたりと悪くない対応。後者には↑に関する記述もあり。


 推奨度――D→S(不完全版→完全版。「ディエス」というネタではなく、本当にこのレベルで違う)。




 おまけ。



 では一つ、皆様私の歌劇を御観覧あれ。

Atziluth流出――」

 その筋書きは、ありきたりだが。

Du-sollst混沌より溢れよ――」

 役者が良い。至高と信ずる。

Res novae新世界へ――」

 ゆえに面白くなると思うよ。

Dies irae怒りの日

Also sprach Zarathustra語れ超越の物語

アトリの空と真鍮の月

 一言で表すなら、アタリの俺(思いつかないからって自慢&シャレ……)である。


●『果てしなく青い、この空の下で…。』の続編。メモリアル版や完全版を除けば九年を経ている。メーカーとしても(四年ほどの活動休止を挟み)TOPCAT名義の作品は八年ぶり。

●前作を想起させるシーン・設定が多く、キャラクターも二人が続投。一人はヒロインにもなっていて、どうやら主人公と結ばれなかった展開の続きであるらしい。……それ、ファンの身にはかなり複雑!

●ヒロインごとの役割は、より徹底されている。前作では「大人に翻弄される子供」の構図が多かったものの、今作では大人と対等以上に張り合える子供が少なくない。むしろ多くの大人こそ役立たずで、だからこそ振り回されてしまう皮肉がある。――力や立場に縛られるヒロインたち。終わりをもたらす主人公との関係により、その運命は変化していく。

●伝奇作品に要求される点を全て満たしている。いい意味で古臭く程々に落ち着いた文体。幾度も書き直され七回目の改変でようやく確定したという物語の深みはさすがの一言。ただ誤脱も目立つため、プレイ前に修正パッチの適用を推奨。テキストやバグの修正だけではなく一部のイベントはアップグレード。またグラフィックも追加される。

●いい意味で古臭いのはシステム面も同様で、必要十分の快適さ。「次の選択肢までジャンプ」機能がないのは残念なところか。初期設定ではテキストの表示形式が縦書きになっていて(変更可能)逆にイベント時は横書きに切り替わる(同じく)。

●全シナリオ共通のテキストも『青空』より増加。されど使い回しゆえ矛盾点が生じてしまっており、テキストとCGにも矛盾点が散見する。CG枚数がさして多くないので対応に限界があるのか。

●各ルート――ヒロインごとに異なる視点や立場、もたらされる情報から、事件の全体像を把握していく仕組みは前作と同様。しかしヒロインの重要な情報も他シナリオであっさり明かされたりするので、二周目以降は展開に意外性がない。総じて白けてしまいがち。謎も多く残る(主人公が受けた呪いなど)。

●伝奇色も強まってはいるものの、少し性質が変わり「ビックリドッキリお化け屋敷」といった感。スケールが大きくなったことで荒唐無稽さも際立つ。終盤の大怪獣バトルもどうかと思う。等身大の怪奇のほうが恐怖は感じる。


 ――備考。

●前作を必要以上に意識しすぎた。絵しか変わっておらず(それにしたって昔風)センスが十年近く昔のまま。変わらぬ魅力はあるにしても、完全な新要素が一つも思い浮かばないというのは……。……あ、山神の獣は好き。他人とは思えなくて。

●今作もクリア時に特典ページのURLが表示されるようになっていて、おまけシステムボイスやオリジナル壁紙などをダウンロード可能。コンテンツの一つに「鷹取兵馬による忘備録」があり、バッドルートの原案が掲載されているのだが……四つとも、おっそろしくひどい。とりわけ不憫なのは眼鏡ヒロインで、そこも前作から変わらない点。不変もいい加減にしてください先生!


 推奨度――B。


Trample on "Schatten!!" ~かげふみのうた~

 一言で表すなら、仮面レイダーである。


●平和を脅かす敵と変身ヒーローが戦う。仮面ライダーを始めとする特撮作品のオマージュが散見し、プレイヤーが「わかる人間」か否かで大きく推奨度が変動。タカヒロ脚本よりも極端。

●例その一、おやっさん編。

「お兄ちゃんの目指した
 『おやっさん』と呼ばれるマスター、
 今それが叶ったんだ!」
「なんて喜ばしい、なんて素敵な光景なの!
 ああ、この光景を天国のあなたに訴えたいっ!」
「だから今あたしはあなたに叫ぶっ!!
 見ててくれてますか、
 立花さぁぁぁんっ!!!(エコー)」

 昭和ライダーシリーズの名脇役、立花藤兵衛。演じられた俳優は亡くなられている。

「何言ってんのっ愛作!?
 お兄ちゃんはお金があったら
 レーシングチームも作りかねない人だよ!?」

 お金があったらTAIL WINDは解散しなかったのかなあ……。

●例その二、キザイアさん編。

「フ……。
 我が『かげふみのうた』を聞くがいい……!!」
「……レイダーキック……!」

 似せていることを隠す気もないな!? ジャンプからキックはお約束であり、加えて(魔方陣の)拘束となれば『仮面ライダー555』のドリルキックを連想した。「回っ……転っ……力はぁぁぁぁっ……! 突破力ぅっっ!!!」――それドリルキックですよねキザイアさん。

「何を言う!
 私的には『蒸着』『赤射』『焼結』に並ぶ
 センスだと思うておるっ!!」

 特撮全般に造詣が深いキザイアさん。宇宙刑事シリーズ三部作の変身時の口上で、ゼルクレイダーは「影装」。

●キザイアさんのレイダーキックは、ネタと思いきや本当にカッコいい。ジャンプはともかく、敵と接触することで実体化させダメージを与えるなら、高速の一撃で先んじるのは理に適っているし。バリエーションも地味に豊富。脚部に仕込んだ小型のパイルバンカーを次々に撃ち込むのが好み。

●一見するとギャグでしかないオマージュ満載でありながら、意外なほど面白い王道物語。ただのバカゲーでもない。正統派の燃えゲーとして大いに評価できる。サウンド、とりわけボーカル曲もやけにカッコいい。変身ヒーロー作品はこうでなくては。

●特筆すべきは「マルチサイトビジュアル」。オートセーブ機能と合わさり、基本的にセーブが必要ない。シナリオの進行具合が把握でき、既読シーンであれば自在にハイパークロックアップ=時間を戻せる。時には主人公以外の視点に移り、物語の裏側がサブシナリオとして描かれる。選択肢の分岐も非常にわかりやすい。

●今作にもある「半脱ぎシステム」は、やはり全裸でも半脱ぎでも文章に変化はなかった。ただ『MARIONETTE ZERO』とは異なり、最初の数行以外は既読スキップできる。

●説明・描写の不足が多く見受けられるのは残念。素材不足も目立つ(影装時とゼルクレイダーに少しバリエーションがあるだけで、立ち絵はほぼ一パターンのみ)。テキスト表示部分の横では多彩に変化するにせよ、立ち絵が切り替わるほうが違和感も少ないのでは?


 ――備考。

●仮面ライダーシリーズとの比較。おやっさんは昭和ライダーなので、平成ライダーに注目してみると。――第一作の『クウガ』は「超変身」。第三作『龍騎』はライダーが鏡の世界で戦う。劇場版では主人公の鏡像、影の存在が登場。白虎のライダーも。前述した『555』は第四作。第六作『響鬼』は人を守るために戦う(影踏み)鬼の物語。そして途中からは、全体的に第七作『カブト』。自身と同じ姿形と記憶を持った存在がいる(ネタバレ反転)点が非常に近い。……ほぼ偶然だろうとは思うのだけれど、ファンの楽しみ方の一つではあるか。最たる共通点? 1号の声だよ。

●発売から半年も経たずメーカーが解散してしまった。不遇な良作のポジションになるかと思いきや、まさかの北米版がダウンロード配信されたり、NONSUGAR(スタッフはTAIL WINDと同じ?)より復刻版が発売されたりと恵まれている。北米版を選ぶメリットはモザイクがない点、復刻版を選ぶメリットはアペンドディスク&ミュージックCD&イラストブックの追加など。


 推奨度――B(「わかる」場合はA)。


仏蘭西少女 ~Une fille blanche~

 一言で表すなら、御義兄様おにいさまたぶらかす汚らわしい外地女がぁっ!!」である。


●ヒロインは三人。攻略対象という意味ならば二人のみ。そんな少なさからは想像できぬシナリオ量を誇る大作――もとい「耐作」。

●有名な「制作に時間がかかった18禁ゲーム」の一つ。十年越し(それ以上とも)の時点で常軌を逸している。こうなると……むしろ「待作」か。

●システム面の特徴は二点あり、第一にゲームモード選択。これは文章が画面全体に表示される「ノベルモード」と、美麗な絵を堪能できる「ウインドウモード」をセレクト可能。第二に外国語の表示。織田舞子らが話す中国語、その音声と文章を日本語に切り換えることができる。

●四十八ものエンディングを有し、ストーリー分岐も複雑怪奇。少女の最たるハッピーエンド「夏日1」「夏日2」、こちらを例に挙げると……両エンドまでの選択肢数は八十五で、エンディングによっては九十を上回る。およそノーヒントなぞ無理な相談で、後に「ヒント機能アップデートファイル」が公開された(こちらでダウンロード可。修正ファイルとセット)。

●濡れ場の数もイカれており、シーン回想を数えてみたら百十四あった。それ目的で購入するにせよ、楽しめるのは中盤以降となる。原画担当のTonyさんは人気が高いものの……絵だけを目当てに買うのは厳しいか。

●総じて無駄に長い。大正の時代を表現する、レトロな雰囲気の筆法が特徴的ながら……一分で済むことを十分以上かけるがごとく冗長な描写が多い。エンディングも同様で「失格(1~3)」「罠(1~3)」などのナンバーのみ違う結末は、ややテキストが異なる箇所が存在するだけ。四十八エンド中の十以上が、こうした無駄なバリエーションとなっている。

●「長い」より問題なのが「くどい」。あるいは「しつこい」。似た場面が延々と繰り返され、少女の食事シーンは我慢大会にも等しい。「あかい草」など説明不足も目立つ一方、説明せずともいいことばかりを――例えば「黄金きんの髪」といったワードを幾度も幾度も読ませられる! やはり多用される語の一つに「あまやか」があったけれど、空腹に甘すぎる菓子を吐き気がするほど詰め込まれる気分。

●主人公が非常に残念な男。選択肢次第でコロコロ性格が変わるのに、それでいて無能なのは変化なし。大抵のルートで淫欲の権化と化す。探偵となる舞子ルートでのみ知性を見せたかと思いきや……舞子が超人すぎて勝てぬという悲しさ。


 ――備考。

●残念な主人公だと、ヒロインも男の趣味が残念ということになってしまう。まさしく第二のヒロイン、義妹である矢旗澤香純がコレ。……ところで白木屋火災の九年前(本編。外伝シナリオはその前)に、とりわけ服装に頓着しない香純が下着を着けているのは、時代を考えると少々おかしい?

●香純との食事は、いつも判で押したようにスープのみ(メニューの差分さえ用意されない)。このため子爵家なのに極貧のイメージがある。こうした家柄と離れた印象は、ゲスト的に出てくる『女郎蜘蛛』の北畠蝶子にも通じ、なんだかんだでヒロインでは香純が唯一好きだったりする。


 推奨度――C。


G線上の魔王

 一言で表すなら、邪魔王(初回超重量特典版は)である。


●『車輪の国、向日葵の少女』と同じ制作スタッフの作品。「ヒューマンドラマADV」第二弾。

●真冬の大都会に、突如として出没した「魔王」。奸智に長け、次々と不透明な事件を起こしていく正体不明の犯罪者。「勇者」宇佐美ハルは、その卓越した頭脳を駆使して魔王に戦いを挑む。――懸けるものは純愛、賭けるものは命。

●タイトルの由来である、J.S.バッハ「G線上のアリア」やシューベルト「魔王」を筆頭に、BGMのほとんどはクラシックの編曲。ボーカル曲も印象深い。

●ヒューマンドラマらしく、全ヒロインのシナリオで「家族愛」が描かれている。加えて「悪」。今作でもテーマ性の高さは大きな魅力。

●今回も俗に言う「叙述トリック」あり(こういうトリックの有無を明かすのはマナー違反だけれど、ゲームを進めれば誰でも疑うレベルだからいいだろう……)。しかし最初から疑いの目を向けられる部分だったのは論外。脚本構成で「読み手にそう思わせようとしているのでは?」と察せられたら、普通はそれ以外の可能性を考えるわけで。簡単に真相が読めてしまった。

●サブヒロインのルートになると決まって某人物が消失する。強い信念で計画を実行に移すのかと思いきや、実行確率まさかの四分の一(バッドエンド除く)。別の方向に目を向けさせるだけの無駄な行動もあまりに多い。無駄で無用、かつリスキーな「遊び」ばかり興じているようにしか見えないのは暇人なのか。

●強引なトリックに関係して、主人公にも不可解な点が残ってしまったのは大きなマイナス。せめて説明が欲しかった。「穢れなき少年の瞳を、おれにくれっ!」はこちらの台詞(穢れなき=ミスリードを疑わない)。

●ミステリーとして見れば推奨度C以下。泣きを意識したヒューマンドラマでミスリードの巧みさばかり注目するのも違うか……。それ以外は総じて高水準。レベルの高さは美少女ゲームアワードの大賞に輝いたことからも証明されている。


 ――備考。

●発売前から期待作との見方が多かったゲーム。脚本や原画担当、ボーカル曲の歌手や各声優陣に至るまで、人気どころを集めた感が強い。とりわけ魔王のボイスは注目度が高く、話題性が十分だった。……発売日延期を重ねた結果、反逆アニメの第二シリーズとも重なるとはなあ……。

●通常版と同時に「初回超重量特典版」なる、邪魔この上ない代物も発売された。……通常版を予約しようとしたら取り扱っておらず、嫌々ながら超重量版にしたのだが。クソ厚いわクソ重いわと予想以上の邪魔さ。狭い家にはとても置いていられなかったのでクリア後すぐに売り飛ばす。特典が足を引っ張った典型。「押しつけがましい特典だな。おぞましいことこの上ない」(byKAMI)


 推奨度――A。


装甲悪鬼村正

 一言で表すなら、――これは英雄の物語ではない。関係ないけど自分の携帯電話はauである。


●前回に引き続きニトロプラスのタイトル。ニトロ十周年の記念作品で、その肩書きに恥じない「スラッシュダークADV」。

●魂の宿る超常の鎧「劔冑」。この世界の武者は、それを装甲することで超常の力を得る。主人公・湊斗景明もまた、血のように赤い劔冑「村正」を装甲し、悪行を行なう者を断ち切る。だが同時に善行を行なう者さえも殺していく。それは劔冑の呪い。勢洲右衛門尉村正の――かつて大和全土を地獄に変えた妖甲の戒律「善悪相殺」――。

●敵を殺したら味方も殺すことを強要される「善悪相殺」。憎く思う者を一人斬るならば、愛する者をも一人斬り殺さなくてはならない戒律。よって好感度の高いキャラクターは優先して殺されることになる。恋愛フラグではなく死亡フラグが立つ。

●「誰もがハマる戦慄の暗黒大河ドラマスラッシュダーク!」と掲げているだけはあり、際立った面白さ。ただ誰もがハマるというには、少しばかり人を選ぶシナリオ。万人に好まれる方向性ではない。当然のように濡れ場も薄い。

●剱冑やメカニックは3Dモデルになっていて、その点では『斬魔大聖デモンベイン』の後継。また「剱冑回転目録」なる観賞モードもあり、攻撃力・防御力・速度・運動性、陰義(俗に言う必殺技)などのデータが閲覧可能。

●ニトロ初のワイド画面で、縦書き表示(一部は横書き)のテキスト。これは作品が強く持つ「和」に同調している。エンターテイメント性の高さをストーリーのみに依存することなく、システム面でも盛り上げようとしているのは高評価。

●大作だけにプレイ時間も相当のもの。全選択肢を試した自分の場合、少なくとも七十時間は軽々オーバー。八十時間近かったかもしれない。とりわけ選択肢が多い復讐編(武者戦ならともかく、飛行艦探索のイベントは……)や、故郷探索はまだしも五階層方陣がシビアすぎる魔王編は手間取りがち。助けてライガーさん!

●プレイ時間以外の難点は、ほぼシステム面に終始する。ゲームを起動してからタイトル画面が立ち上がるまでが遅かったり(「善悪相殺」からの演出をカットできないのが原因)。快適にプレイするにはある程度のマシンスペックが必要。しかし十分なスペックがあったとしても、さほど快適とは言えないのがスキップ。超速スキップでも遅い。設定を「未読時でもスキップ」にすれば改善されることから察するに、一文ごとに既読・未読を判断しているせい?


 ――備考。

●創立十周年記念作品だけあって、過去のニトロ作品を知っているユーザーはニヤリとするような箇所も多々。魔王編の夢は、その最たる例。……これはファンサービスと言うより、脚本家の趣味か。『刃鳴散らす』も第四章タイトルが「鬼哭街」だったり、脈絡なく『吸血殲鬼ヴェドゴニア』にシフトしたりとブッ飛んでいたしな……。

●通常版のパッケージ絵は、いざ腰の刀を抜かんと構える暗黒星人。背後には悪鬼(?)の影。対して限定生産版にはパッケージ絵がない。特製の木箱仕様ゆえに。……限定版も通常版も、一見して普通のゲームではないとわかる。タイトルからして『装甲悪鬼村正』ときた。手を出して趣味に合わなかったとしても自業自得か。


 推奨度――S。


装甲悪鬼村正 二〇〇九年一〇月三〇日、喜劇の幕が上がる。

スマガ★StarMineGirl

 一言で表すなら、バッドエンド? 「バルスッッ!!」である。


●何回バッドエンドを迎えようとも人生をリベンジする少年の物語。特別な力など何も持たず、手に入れたとしても少女の夢のようなもの。万に一つもありえないハッピーエンドを、本当に万回でも試し続ける。

●ご都合主義と笑われるような、まずありえない結末であろうとも、それを目指して走る「人生リベンジADV」。あらゆる選択肢を総当りしていく長大な挑戦。ADVだからこその手法は高く評価したい。

●脚本は十分すぎるほどのボリュームで、ルート数も九つと多め。名前が少し面白い。

「SHE MAY GO」。
「SAD MAD GOOD-BYE」。
「SHOOT THE MIRACLE GOAL」。
「SARABA MITSU GETSU」。
「SWEET MEMORY GOES ON」。
「SAKURA MAU GAKUEN」。
「SUPER MIND GAME」。
「SEE THE MAGICAL GOLD-STAR」。
「STAR MINE GIRL」。

 それぞれ頭文字が「S」「M」「G」と作品名を表している。主なヒロインとなる魔女たちも、個々の頭文字に対応する「スピカ」「ミラ」「ガーネット」の三人。

●大槻ケンヂさんの「あくびの戦士がふぁー」を筆頭に、物語を盛り上げる楽曲の数々も魅力的ながら……一番の魅力は、やはりうんこマン(仮)。愛する少女たちが幸せになる究極のハッピーエンドを追い求め、ここまで前向きに死にまくる主人公は前代未聞。ご都合主義の結末が嫌いな自分であっても、彼のスタンスは評価しないわけにいかない。

●「SUPER MIND GAME」などは何千回死んでもハッピーエンドに挑み続ける。選択肢の「危険を受け入れる」から「諦めない」八連続は、まさしくスーパーマインドゲームの名に恥じない展開。なのに死亡数トップはまた別のルートだから恐ろしい。一般人でありながら、その死を恐れないスーパーマインドはヒーローそのもの。――これは英雄の物語である。

●ボイス全体の約四割が主人公。なのに一周目は声がない仕様。シナリオ構造上の問題と理解できるものの……少々もったいない。ただでさえ長大なゲーム、一人の声を聴くためだけに同じシーンを再プレイするのは厳しく、現に自分も断腸の思いで飛ばしてしまった。英雄のお声を!

●細かな演出効果の数々、その一つを取ってみても個性に満ちている。初回起動時からしてインパクト大。早々に謎の台詞が流れ、よくわからない質問を受ける始末。バリエーション豊富な終了メッセージは合計で三十六種類を数える。


 ――備考。

●ニトロプラス作品では珍しく悪人が存在しない。一見すると普通の萌え系に見えなくもない点でも異彩を放つが、以降『アザナエル』『ソニコミ』とリリースされたことで珍しくもなくなった。恐るべき津路参汰パワー。

●修正ファイルが出ているので、プレイ前に適用させておきたい。……しかし。これでも修正されない最後の濡れ場で露見するバグの存在が虚淵玄さんより指摘されている。

●マップ移動型ADVのファンディスク『スマガスペシャル』は、一日がループし続ける閉ざされたセカイにて、人生リベンジをリベンジする特別編。ハッピーエンドなんて、いらない。迎えるのはバッドエンドか、そもそも結末が存在するのか……?


 推奨度――A。


キラ☆キラ

 一言で表すなら、「本当にクソッタレな傑作でした。堪能しました。ファック」である。


●主人公・前島鹿之助は、アルバイト先で椎野きらりという少女と出会う。彼らが所属する「第二文芸部」は廃部が決定していた。最後の晴れ舞台となる、文化祭の出し物をどうするか? 二人は同部に所属する石動千絵、樫原紗理奈と組んでパンクバンドを結成することになる。――文化祭ライブまでを描いたのが「Chapter 1」。

●ライブの模様はインターネットで配信され話題になり、地方のライブハウスから出演依頼が舞い込む。受験は間近、家族が反対している……それは理解しつつも、今の彼らはノーフューチャーの精神を身に付けたロックンローラー。学園生活最後の夏休み、オンボロワゴンに乗り込んで、長い旅に出発してしまうのだった。――このライブツアーの旅を中心に描いているのが「Chapter 2」。

●ヒロインたちの固有シナリオが「Chapter 3」。夏休みの旅が終わるまではロック中心で、それ以降はルートによりけり。最も旅が長くなるシナリオは紗理奈。同時に最もロックから離れるのも紗理奈。作中そんな設定はないのに「ビッチ」呼ばわりされる子。

●瀬戸口廉也節、炸裂。人間の狂気を描いた作品ばかりのライターが、まさかの「青春恋愛ロックンロールノベル」。合わないのではと思っていたのは杞憂だった。得意分野(狂気とか幻覚とか自殺とか遺書とか宗教色とか)も健在。

●三人のヒロイン中、きらりだけエンディングが二つある。他のルートを終えることで追加される第二の結末が、いわゆるグランドエンディングなのだとは思うけれど……察するにメインシナリオは最初。これだけ「Chapter 4」があり、何よりもライターの得意分野が際立つ。ファンにとっては反則級。

●脚本以外も高水準で、原画家に『グリーングリーン』などで知られる片倉真二さんを起用。しかし特筆すべきは楽曲。プロデューサー自身がバンドマンであるため力の入れようが違う。作中に登場するバンド名義で実際にCDをリリースし、バンドの公式サイトも存在するほど。


 ――備考。

●ヒロインは三人とも家庭環境に問題があり、例外なく実の父親に比重が置かれている。脚本家の別作品――『CARNIVAL』も『SWAN SONG』も、なぜか決まって家庭環境、とりわけ父親が大問題だった。離婚なんざ当たり前、娘に手を出したり自殺したりとタチが悪すぎる瀬戸口ファザー。

●パッケージに記されている動作環境、当然のように「ボーカルソング10曲」の記載があるのは笑ったものだが……甘かった。移植版ではノーフューチャー絶好調の所業「全曲完全新曲」をやらかす。本当にバカだな!(褒め言葉)

●歌に力を入れている点、ファンディスクや続編の存在など、先に紹介した『輝光翼戦記 天空のユミナ』とは近しい部分も多い。楽曲への異常な傾倒ぶりでは上か(普通勝てない)。移植版の発売は『天空のユミナ』リリースの翌月だった。

●インターネットラジオ「Radio d2b」も配信されていた。なお「キラ☆キラ」という全く同名のラジオ番組がある。こちらは一般にも有名なので、さすがに知名度では劣る(普通勝てない)。


 推奨度――S。


輝光翼戦記 天空のユミナ

 一言で表すなら、超時空要塞マクロス戦艦ゼーレルム~私の彼はパイロット~である。


●「世界を守る救世主」であるらしい翠下弓那を守るため、主人公の朱島歩武は神撫学園に転入した。しかし当の弓那は暴力事件を起こし、留年決定の事態に陥る。そんな弓那の前に論説部の部長・黒河雲母が現れ、学園の星徒(生徒)会長になれば留年を取り消せるとそそのかす。弓那(の進級)を守る歩武の戦いが始まった。

●選挙で勝たなければ――対戦方式で演説し、多くの票を獲得しなければ会長にはなれない。要は討論。論説戦に勝利し支持を得ていくのが超選挙大戦。トーナメント制で行なわれる超能力バトル。……演説じゃなかったのかよ!

●論説戦は一人のフォワード(前衛)と、支援するバックヤード(後衛)に別れる。フォワードは「序論・本論・結論」を主張。論破を目的とする言葉は、剣や銃といった武器に形を変える。相手に攻撃しダメージを与えられたなら、主張が通じているということ。バックヤードはフォワードを支援する役。励ます言葉で回復や強化をしたり、相手には野次を飛ばして行動を妨害したり……。視覚的には超能力バトルにしか見えない。

●戦闘は選挙活動だけでなく、オーダクル(異世界)内のダンジョンでも発生。本編よりもダンジョン探索……クエストやミッションに時間が取られるのは確実か。戦闘がカットできないこともあり(Ctrlで早送りは可能)極めるまでプレイしようと思えば、百時間程度あっさりと越えてしまう。過去に紹介した全タイトルで最長のプレイ時間。

●ダンジョン探索を必要最小限にしてもまだ長い。超選挙トーナメントに勝ち残ったところで、それは地球編の幕でしかなく宇宙編が待っている。またオールクリアの完結編を出現させるためには、ヒロイン三人のシナリオに加えて、オーダクルでも最低で三周が必要。かつ難易度設定も、周回を重ねるごとに「ノーマル→ハード→スーパーハード」と増えていく。

●音楽に力を入れている他は、ゲーム性の高さが際立つ。無駄に種類の多いスキル能力などは、とてもプレイヤーに把握させる気があるとは思えない。全種類を使い分ける必要はないのが救いか。物語中で重要な役割を果たす歌唱スキルすら、必ずしも使う必要はなかった。

●戦闘やダンジョンは豊富な演出効果が楽しいものの、そうしたバリエーションの多彩さがあろうと、こうも長いと飽きてしまいがち。演出に対して素材が少ないのも気になる。立ち絵が(ほぼ)一枚しかなく、ダンジョンの敵も色が違うだけの同デザインばかりなのはいただけない。

「荒唐無稽」という表現さえもバカらしくなるほどのトンデモ物語。ひたすらに力任せの展開ばかり。しかし、その任せる「力」はビッグバン級(宇宙が爆発する意味で)。敵が大宇宙だろうが神だろうが、殴って倒せるなら殴ればいい――そんな感すらあるスケールの大きさが魅力。


 ――備考。

●ただでさえ長いのに、ファンディスクや続編までもリリースされている。本編のみをプレイするなら廉価版、ファンディスクを含めるなら「大天空パック」の購入を推奨。

●続編『輝光翼戦記 銀の刻のコロナ』も、同様にファンディスクが発売された。購入するのであれば、やはり本編とファンディスクがセットになった「大龍魂パック」推奨。……二度あることは三度ある。ファンディスクが出そうな気配があってすぐにプレイしない場合は、購入を見送ったほうが賢いか。


 推奨度――B。


天空のユミナ

俺たちに翼はない

 一言で表すなら、俺たちに翼はないこともないんじゃないかなあ、っていう物語である。


ストーリーには「それはきっと何処にでもある、ありふれた物語。」と記されており、確かに一見すれば普通の萌えゲー。実際は根本的な部分に狂気を隠し、おまけにヤク中も多いクレイジーな内容となっているからタチが悪い。

●発売延期が相次いだことで有名。本編の半年前にリリースされた『Prelude』から日野英里子の声が変更されている。延期がなければ、声優が病気で療養となる前に発売できていたものを……。なお主人公を含めフルボイス。豪華声優から声優でない人まで多彩。LR2001は卑怯!(ボイスは必聴)

●群集劇に近い構成。主人公が「羽田鷹志」(前編)→「千歳鷲介」(前編)→「成田隼人」(前編)→「伊丹伽楼羅」→「羽田鷹志」(前編)と移り変わる。鷹志の前編が二つあるのはこれで正しい。

●最初の三つの章で最も好感度を上げたヒロインのいる後編に進み、三人のヒロインを攻略することで最終章がプレイ可能となる。このシナリオのヒロインは妹の羽田小鳩。アニメ最終話では大鳩。

●かなりのキャラクター数を誇る。エキセントリックな面々がやけに多いのは隼人編のせい。主要人物の大半は鳥に由来する名となっていて、主人公たちの姓は空港(羽田空港・新千歳空港・成田国際空港・伊丹空港)と面白い命名。

●システムが充実しており、特にシーンスキップ機能は便利。森林彬さんの粗筋テキストがわかりやすく、シーンの登場人物まで表示されるため一目瞭然。題にもセンスを感じた。

●楽曲もセンスがいい。それぞれ歌い手が異なる六つのボーカル曲に加え、BGMの一つ一つまで素晴らしい。例を挙げると濡れ場にて流れる優しげなピアノソロ――曲名「なんかラブホの有線とかで流れてそうな曲」。げらげらげらだ!(by俺たちのハリュー)

●しかし最もセンスを強く感じさせるのは、やはり王雀孫さんの脚本。西又葵さんは絵よりも作詞センスのほうが個人的に好き。「腐れぬんこおおおぉぉぉ――っ!!」→アレックス3の流れはご両人の狂気センスが融合した結果。


 ――備考。

●軽部狩男の「たわけが! 移植前提でポルノが作れるかッ!」は至言だが、それでいて後に全年齢版(十五歳以上推奨ではある)を作るのがNavel。「攻略できないのはバグ」とさえ言われた香田亜衣がヒロインに昇格を果たす。また本編のスピンオフ作品『AfterStory』も出ている。こちらはポルノなので狩男も納得。

●テレビアニメ版は長大な原作を1クールアニメとして大胆に再構成した内容。原作を知っていればこそ楽しめる。とりわけ七話は原作者が脚本を担当していることもあってカオス極まる展開に。ファンは必見。


 推奨度――A。


僕がサダメ 君には翼を。

 一言で表すなら、B級エンターテインメントである。


●「疾走系伝奇ADV」と銘打った暁WORKSデビュー作。暴走系や迷走系などのほうが即していたかと。

●三つの勢力が描かれる。普段着(着物でも可)の社員に、拳銃やら刀やら聖剣やらを持たせて、人殺し・強奪に行かせる大企業。妄信的に神の定めた運命を遵守しようとし、邪魔者は聖書パワーで殺してのける、過激派の新興宗教のような教会(ボスはロリ聖女)。一人と一匹の第三勢力、ジャンヌ・ダルクを始祖とする魔女。……全部イカれてるぜ!

●「聖遺物」を、人の世を豊かにするため利用しようと考える大企業と、逆に人の手に触れぬよう保護すべく活動する教会の対立。各々の正義を信じる者たちが、派手な争奪戦を繰り広げる――そうした物語ゆえかヒロインも派手。常に緋色の着物を身にまとい、その姿で走り回るどころか飛んだり跳ねたり二丁拳銃をブッ放したりと、派手に服の構造が無視される。

●↑はまだマシな部類。例えば聖女を守護する「ラファエルの盾」――名の印象から騎士か何かと思えば、まさかの忍び。例えば魔女の末裔――身の丈より長大な鎌を振り回す。二人の衣装は露出狂と紙一重。

●選択肢の半数が「中に出すor外に出す」。一周目には選択ミスで死亡するようなバッドエンドもあれど、いつしか中出しと外出しの二択ばかりに。そんな主人公(ヒロインへの愛情と正義を同一視するクレイジー眼鏡)、彼が途中から口にしなくなる座右の銘は「DEATH BEFORE DISHONOR」――「不名誉よりも死を」という抱腹絶倒の絶命ギャグ。

●オープニングムービーはA級。全体的に楽曲のレベルが高く、オリジナルサウンドトラックが初回特典で同梱されているのはイカしてるぜ!

●最新の修正パッチ「ver.1.01」でも改善されないバグあり。教会の行動選択で「シャワールームorトイレ」と「覗くor覗かない」(一回目)――ここで「トイレ」や「覗く」を選択すると、同じイベントが複数回発生したりとテキストに矛盾が生じる。

●バグ以外にも不満は多い。列挙すると「素材の数が、立ち絵を筆頭にやや不足気味」「グラフィックとテキストの不一致。『青い瞳』ではない」「一部テキスト(代表的なのが最終決戦のワンシーン)を各ルートで使い回しており、それでいて既読スキップもできない」……などなど。


 ――備考。

●アダルト・萌え系のライトノベルに近い作風。シナリオ担当のみかづき紅月さんはそちらが本業でもある。著作は美少女文庫が多く、代表作『サムライガール』は「PCアニメーションノベル」という奇抜な代物(原作者が「ゲームなのかはたまたアニメなのか? 疑問に思っていましたが~」と書くほど)にもなった。

題の表記がコロコロ変化する珍奇なゲーム。時には読点が増え「僕がサダメ、君には翼を。」となったり、逆に句点が消えて「僕がサダメ、君には翼を」になったりする。他にも数パターンあった。作中の文章も、英語や数字が全角だったり半角だったりと……シナリオライターが一人とは思えない不統一さ。


 推奨度――B。


僕がサダメ 君には翼を。応援バナー

果てしなく青い、この空の下で…。

 一言で表すなら、果てしなく暗い、伝奇ミステリーである。


●因習に縛られた村・安曇村。閉鎖が決まった学園に通う主人公とヒロインたち。彼らの生活は、村の開発に便乗し私腹を肥やそうとする元代議士に脅かされてしまう。次第に状況は悪化していき――昭和の静謐な山間で、怪奇が呼び起こされる。

●物語は一年間。前半と後半は落差(まさしく突き落とされるかのよう)が激しい。秋からヒロインが個々に抱える問題が顕在化、オカルティズムな方向に進む。いつしかクトゥルフ神話の様相を呈しているから驚き。

●原画は『COMIC LO』の表紙イラストで知られるたかみちさん。スタジオジブリ作品を思わせる画風で、背景も丁寧に仕上がっている。雰囲気のあるサウンドも印象深い。

●最初に発売されたのが二〇〇〇年であることを考えれば、システム環境も悪くない。文章の表示形式は縦書きと横書きを選択可能。「次の選択肢までジャンプ」は、文がスキップされていくのではなく一瞬で次の選択肢に移行する。

●個性的ながら、それを強調しすぎない落ち着いたヒロイン像は魅力十分。とりわけ表のヒロイン芳野雨音と、裏の本命ヒロイン八車文乃は人気が高い。ゲームの難易度も高いが愛で乗り切れ!

●人気のある二人に対し、やけに人気がないのは松倉明日菜。彼女は彼女でバッドエンドが素晴らしかったのに……(不憫なポジション)。各ヒロインにはハッピーエンドとバッドエンドが存在し、後者も意味を持つ。

●そのルートで選ばれなかったヒロインは大抵不幸になる。特に雨音はひどい。当然バッドでも不幸な結末を迎える。全ヒロインのルートを終えることで、各ルートの謎が補完され全体像が把握できる作り。

●選択肢の難易度が高い反面、一度もバッドエンドを見ず全ルートを同一のしおりでクリアすれば「エキスパートクリア」となり、特典ホームページへ行ける(検索したら普通に出てくるけれど……)。壁紙やおまけCGなどをダウンロード可能。ショートストーリーも置かれているのでクリア後は要チェック。


 ――備考。

●二〇〇九年に、主人公を除きフルボイス化した『完全版』が発売。本作に限らず、決して未完成ではなかったのに「完全版」と銘打つのは納得がいかない。なおPS移植版も声あり。キャストは異なる。

●田舎ならではの「同年代の男が一人しかいない」というハーレム設定があるためか、ヒロイン全員にモテモテの主人公。これについてはバッドが本命の明日菜ルートにて独白が。

この村に、俺以外の同年齢の男の子がもっといたなら、彼女の可愛さに気づいて声をかけていたかもしれない。
逆に誰も同年代の子が居ないという事が、俺に彼女達を異性として見させなかったのかもしれなかった。

 田舎に行きたくなるゲーム。安曇村に行くとあの世にも逝きかねないのだが! ……まさか続編で、より死亡率が高くなろうとは想像もしなかった。


 推奨度――A。


果てしなく青い、この空の下で…。[完全版]

カルタグラ~ツキ狂イノ病~

 一言で表すなら、カルタである。


●Innocent Greyのデビュー作。ジャンルは「和風サイコミステリィADV」。デビュー作でこの路線はMOON STONEの『あした出逢った少女』を想起した。

●『あししょ』とは異なり、推理ものとして王道。終戦から六年後の上野を舞台にした連続猟奇殺人事件と、失踪した良家息女の謎。二つの事件が複雑に交錯した物語は……正直なところ先が読める。

●それでも楽しめた。逆に意気込んで推測は正しいのかと読み進める気に。犯人も上月和菜パターン・上月由良パターン・綾崎楼子パターンと三つ想定していたほど。いかに男性陣が怪しかろうが何を言おうが「妄執と狂気に至る愛」である以上、女性陣が全員潔白という可能性は皆無!(同性愛だったら「このホモゲーが!」と放り投げていた)

●恋人の関係となれるエンディングが存在するのは二人のみ。メインルートは和菜がヒロインで、その他の扱いは数段落ちる。……個人的には和菜より、雪白(遊郭)の雨雀姐さんや凛のほうが好みだった。凛は濡れ場も最多。

●妹と親友に活躍の場を全て持っていかれる高城秋五が情けない。顔が前髪で隠されているため見た目も地味ときた。「なぜモテるのか謎の主人公」の典型と言える。これもミステリィ。

●シナリオ・グラフィック・サウンドと総じて高水準。システム環境も十分で、廉価版ならコストパフォーマンスも高い。ネックとなりそうなのは物語のみ。『あししょ』ほどではないにしても、やはり人を選ぶ。


 ――備考。

●杉菜水姫さんの絵は文句なしに美麗。性的な実用性は……どうだろう? 綺麗すぎると使いにくいという人いるしな。ところで副題を最初「イキ狂イノ病」と見誤ったのは自分だけではないはず。

●カルタグラとは「魂の苦悩」の意であるらしい。語感もセンスもいいなと感心していたら……PS2移植版の題が『カルタグラ~魂ノ苦悩~』。そのままだった。なお移植版が発売されたのはオリジナル版と同年で、かなり速い。さすがカルタはスピード勝負。

●本編プレイ前にファンディスクをやる人は少数派と思われるが、どんなものか気になって公式サイトでも軽くチェックしようと考える人はそれなりに多そう。――しかしそれは愚考にして愚行。『和み匣』はキャラクター紹介からネタバレの嵐なので要注意。一人目の時点で「事件の影の首謀者」などと書かれているのは正気を疑う。

●『殻ノ少女』にも今作のキャラクターが何名か登場している。今まとめてプレイするならプレミアムボックスの「PARANOIA」推奨。大抵の場合は廉価版との二択になるか。


 推奨度――B。


痕~きずあと~

 一言で表すなら、「……買わないと、あなたを、殺します」である。


●最初に発売されたのは一九九六年。非常に古い18禁ゲームの一つ。先に紹介した『女郎蜘蛛~呪縛の牝奴隷達~』よりも古い。それだけにリニューアル版が二度も出ている。二〇〇二年と二〇〇九年に。

●ここで述べるのは最も入手しやすい二〇〇九年版。旧版からの大きな変更点を挙げると、主人公を除く全員がフルボイス化、キャラクターデザインも現在のトレンドに近いものへと変更。完全な新要素として新たなヒロインも加わった。何を血迷ったかメイド。

●メイド編の出来はあまりよろしくなかった。シナリオ担当もオリジナル版の高橋龍也さんではないし、本編とは切り離して考えたほうがいい。おまけシナリオの一つといった印象を受ける。

●リメイクを重ねるごとに余分が増えているという見方も。それは確かに。絵が変わるだけならともかく、文章自体の加筆(オリジナルとは違うライターによる修正)も多い。かつ蛇足じみた新シナリオもあるとなれば。――初回限定版では、そうした不満に対してのフォローが万全。

●二〇〇九年版は、初回限定版に限りオリジナル版も収録。前作『雫~しずく~』も収録され『痕』同様に初回限定版では二バージョンをプレイ可能。対して通常版はリニューアル版(二〇〇四年に出たフルボイス作品)のみで……って版版版とわかりにくいか。違いをまとめると以下のようになる。

 初回限定版――『痕』一九九六年版、『雫』一九九六年版・二〇〇四年版収録(先着特典として柏木千鶴オリジナルデザインフィギュアも付属)。
 通常版――『雫』二〇〇四年版収録。


 通常版を選ぶ利点は、価格と入手の容易さ。定価は千円ほど安い。

●タイトル画面で起動時に流れる「寝覚月」を筆頭に、印象的なBGMが多い。また二〇〇九年版にはアニメのオープニングムービーもある。「花詞」を歌うSuaraさんは、『雫』二〇〇四年版のトゥルーエンディングテーマも担当。

●物語は鬼の伝説が残る田舎を舞台とした、いわゆる伝奇もの。ヒロインは主人公の従姉妹である四姉妹で、最も伝奇色が強いのは長女のシナリオ。次女のシナリオはサスペンス色が強く『雫』を思わせる。三・四女のシナリオには、伝奇のお約束とも言える前世や、転生してのラブロマンスあり。古き良き王道。

●過去の鬼を語る三女シナリオをクリアすると、異なる主人公のシナリオが解放。こちらでは現代の鬼について語られる。最後の四女シナリオではオカルトホラーにSF色をも含み、同時に鬼の正体が明かされる。個々のシナリオ傾向が異なるのは特色の一つ。

●「3ねん3くみ たけだ てるお」を始めとして、語られなかった未回収の伏線もあるのは残念。黒タイツ痴漢エロ漫画で知られる月吉ヒロキさんのコミカライズ版は出来がいい。こちらでは伏線を全て回収してくれますように。


 ――備考。

●『雫』はビジュアルノベルの開祖。続く『痕』も18禁ゲームの伝奇作品として元祖。より広い客層に売り込んだビジュアルノベルシリーズ第三弾『To Heart』の大ヒットもあり、以後ビジュアルノベルは18禁ゲーム業界の主流になった。前世紀に業界を発展させた功績は大きく、その敬意も含め推奨度はS。


 推奨度――S。


女郎蜘蛛~呪縛の牝奴隷達~

 一言で表すなら、蜘蛛の糸、呪縛の縄が結んだ縁である。


●プレイしたのは一九九八年に発売されたWindows95版。前年にはPC-98版も出ていたらしい。強制終了の多発に悩まされたのは、バグがあるせいかXPで動かしたせいか判断できず。

●時代は大正。文学風の筆致にてレトロな雰囲気を表現するシナリオは三人称視点となっている。以前に紹介したタイトルでは『神樹の館』が近い。誰もが知る「大正の大事件」も描かれ、結末に大きく影響する。

●緊縛SMを題材にしたアブノーマルな作品でありながら、知る人ぞ知る純愛物語。少し検索すれば「SMゲーで泣かされるとは思わなかった」とか「北畠姉妹に萌えた。屋敷は燃えた」的な感想が見つかるはず。……自分は蝶子派だけれど、主人公を「書生さん」と呼ぶ茉莉絵に少々ときめいたのも否定できない!

●ゲームパートは昼間と夜間に別れ、調教などは夜。かなり自由度が高く、プレイヤーの選択によっては主人公が別人のように変貌。隠れ策士の蝶子をも罠にはめる鬼畜ぶりを発揮したりするのだが、その「加虐度」「狡猾度」も隠しパラメーターになっている。

●主人公とは逆に、良くも悪くもブレないのが中畑伊佐治。卵を愛する詐欺師であり、口にする言葉はどれも怪しい。それでいて強く印象に残る。

「人生なンて歩き回る影で、人はみンな哀れな役者さ。
 阿呆の喋る物語、
 効果音と怒鳴り声は、五月蝿うるさくて堪らんが・・・・・・」
「要するに、全部、空虚からつぽなンだよ。」


 ――備考。

●あらゆるゲームソフトで最も因縁深い作品。最初に『女郎蜘蛛』を知ったのは、中学生のころ本屋で見かけたノベライズ版(確か年齢制限なかったよな……?)。パラパラと目を通し、そこで「原作はパソコンのゲーム? こんな官能小説みたいなゲームあるの?」とエロゲーの存在を知った。そして数年後。家にPCが入り、いざエロゲーとやらに興じてみようと考える。思い出すのは本屋で読んだ、あの……、……あの……、……タイトル忘れたッ!?

●明確に記憶に残っていたのは「明治だか大正だかの話」「ヒロインは三人。母親と娘二人。姉は和服で妹は洋服」の二点のみ。加えてノベライズ版の発売時期から察するにWin95だろう……(当時PC-98は名さえ知らなかった)。それだけを指針に探す。発見したのは五年後、秋葉原のショップにて。五年間も探し続ければ因縁深くもなる。

●入手時には大幅にリメイクされた『女郎蜘蛛~真伝~』が、とうに発売されていた……。リメイク版と知らずパッケージを手に取ったこともある。もしプレイしていれば気づけたものを。……『真伝』は絵が変わりすぎなんだよ!

●……ここまで長々と書いておいて話にならないのだけれど、全く人に薦められるゲームではない。システムが不親切で難易度が高すぎる。この難易度は入手の難しさも含めての話。よって今プレイするのであれば『真伝』一択。安く入手できるSM3800シリーズがベスト。

●SM3800版『真伝』、その作品ページを開くとこうある。

緊縛エロスを追求したあの名作がお値打ち価格3,800円で再登場!『女郎蜘蛛~呪縛の牝奴隷達~』をリメイクした『女郎蜘蛛~真伝~』の廉価版。驚天動地の超大作『仏蘭西少女~Une fille blanche~』(絶賛発売中)にも出演の和風ヒロイン蝶子に萌える!!

 ……驚天動地の……超大作……?(うんざりした顔で) 確かに『仏蘭西少女』とはリンクしているし蝶子も出ているが。Tony絵で萌え度もアップしているが!


 推奨度――C(『真伝』ならB)。


MARIONETTE ZERO

 一言で表すなら、HM(エッチなマリオネットorホワイト無双or「あの平民の娘にたぶらかされたのね!?」の略)である。


●前作『MARIONETTE -糸使い-』の一万二千年前。鉱物から様々な力を取り出す「石化学」が発達した、超古代文明の物語。その文明レベルは現代とほぼ同等で、文化も笑えるほど酷似している(古代が舞台なのにパ○ズリとか言うなよ殿下)。

●ジャンル名「ヒューマンエラーアドベンチャー」は、前作の「萌えエロ陵辱アドベンチャー」より作品を表している。燃え系でありながら性的な実用性も高いのは前作同様。片霧烈火さんの歌う主題歌も物語にマッチ。

●特徴的なのは、前作にもあった「半脱ぎシステム」と、選択肢に時間制限が存在する「時限選択システム」。戦闘シーンなどでは非常に制限時間が短い場合もあり、深く考える暇もなく直感で選ぶことになる。とりわけアネモネ戦の難しさは際立つ。「選択肢タイムアップが攻略条件」という意地が悪い仕様のヒロインも。

●全裸か半脱ぎかを選べても文章はほとんど変わらないのに、微妙な違いからスキップができないのは難点。誤脱も多く、また文法がおかしいテキストも散見される。

●宝玉を用いた戦闘では、やはり白の宝玉が強すぎる(まだ力が抑えられてはいた)。何やら意思まであり、時に会話も可能で、ピンチに陥っても策を授けてくれる。至れり尽くせり。

(我はお前と共に滅びるつもりはない。
 少々強引だが覚悟せよ!)

 戦時の話なのに、作中で最も保身に走ったのが白なのはどうかと思う。白は「愛するもののために、守り抜くんだ!」(注・きっと笑うところ)などと、人を乗せるのも上手。スーパーシーロータイム。

●殿下は宝玉の性能に頼りすぎている感があり、御影広樹に比べるとだいぶ見劣りする(ライバルの性別と頭をいじくって性処理に使うエグさだけは大いに評価)。それでも勝てるのがひどい。糸の壁を作るのも赤のアネモネかと思いきや、想像(と前情報)に反して白で、その障壁は触れた物を消滅させられるチート性能。かつ意思を消滅させることで紫の精神干渉のように使えたりと、スーパーシーロータイムは加速する。時速40フォーゼロキロくらいに。

●前作に続き、何よりも男性声優に力を入れている印象。そんな間違った姿勢が白と青色に光る。女性声優は……桃色?(桃井いちごファンはGO)

●意欲作ではあれど、全体的には少々残念なことになった作品。決して発売日延期はしないという、その姿勢は立派だと思うのだガガガ……もう少し時間をかけて制作するべきだったのではないかと。


 ――備考。

●エンディングテロップに名が載ったり、質問コーナーに一番手で採用されていたり、応援バナーキャンペーンの抽選プレゼントに当選していたりと、まさしくファンの鑑のような気がする自分。こことは別に何度か記事にもしたところ……アクセス解析を見たら「デラグランド有馬」が多くて笑った。

●推奨度はC。Bと悩むも、ここはC。なぜなら「G」と形が似ているからだガ○ダム声優的に! 「ゼロと呼ばれたガン○ム」ならぬ「ガンダ○と呼ばれたZERO」。Ez-8はカッコいいと思います。


 推奨度――C。


MARIONETTE -糸使い-

 一言で表すなら、紫色+緑色=MC(マリオネットカラー)である。


●原作はMC小説を取り扱うこちらのサイトに投稿された作品。MC=マインドコントロールで、原作小説のページにも「特殊能力・肉体&精神操作・鬼畜・陵辱」とある。いわゆる催眠・洗脳もの。

●同ジャンルでは多くの場合、モテない男が謎の発情能力とかそんなものを得て、何人かのヒロインを陵辱。ハーレムを形成したり因果応報のバッドエンドを迎えたりと、どちらにせよ色ボケしたまま終わる。――が、そうした作品とは一線を画す。主人公が知力を駆使し、同様の特殊能力保有者を打ち破っていく少年漫画的展開。

●主人公・御影広樹は頭脳明晰で、紫の糸(精神干渉の能力)を手に入れる必要もなく大抵のことができる才子。ヒロイン三人中、姉妹二人には最初から好かれているモテモテ主人公でもある。そんな天才肌の無敵超人が、赤い糸(感覚干渉)や青い糸(肉体干渉)といった他の糸の所有者たちと戦い、次々に力を奪い取り屈服させていく。

●「小説が原作」より「小説の文章をそのままゲームに移した」が近い。やや誤字が多いものの、それさえ修正せずに移したような。物語だけを堪能したいなら、最初から無料の原作小説を読んだほうがいい。軽く読んでみて、これは絵や声が欲しいと思えば購入を検討するのも手。

●金銭を払ってプレイするのであれば、テキストオンリーでは味わえない絵なり音楽なり声優の演技なりに重きを置きたいところ。文章以外にも色気を求めてこそ、初めて購入する価値が生じる。緑色気に満ちまくった広樹役の熱演が光り輝く。

●絵に注目するなら、濡れ場で全裸か半脱ぎかを選択できる「半脱ぎシステム」の存在も大きい。……それはいいとして、システム面は力を入れている箇所とそうでない箇所の差が激しすぎる。バックログ機能がなく手軽に読み返せないのは、小説が原作とは思えない不親切さ。

●このゲームの本番は原作小説で言うところの第二部から。陵辱編の第一部は個別エンディングまで一本道で進むため、スキップを多用することになる。ハーレムエンドを迎えれば第二部に移行。その条件は珍しい。

●プレイするなら『DVD Edition』。CD-ROM版はバグが多数あるので注意。メーカーの活動停止で公式サイトも消えてしまい、サポートが期待できない。DVD-ROM版ではCD-ROM版に見られた多くの不具合を修正している。手ぶらモード(オートモード)で音声終了を待たなかったりと、まだ完璧とは言いがたいのだけれど……。


 ――備考。

●『DVD Edition』は廉価版も発売されている。シナリオ量を踏まえると廉価版こそ適正価格? もう少し安くてもいいか……。元が無料小説となれば。

●陵辱ものの作品としては印象深いシーンや台詞が多い(みさくら語のようなブッ飛んだ卑語という意味ではなく)。例えば広樹の排泄許可発言。

「排泄する事を―――許可する」
「排泄を、許可します」

 それぞれ別の場面で相手も違うのに、口にするのは変わらず排泄許可。やけに後ろの穴に傾倒したシナリオ。


 推奨度――B。

ef - a fairy tale of the two.

 一言で表すなら、おとぎ話ファンタジーは、ひとことじゃない。」(否定!)である。


●『ef - a fairy tale of the two.』というのは物語全体を指す名称。リリースされたタイトルとしては、前編『ef - the first tale.』(以降「第一部」)後編『ef - the latter tale.』(以降「第二部」)に分かれる。ひとつじゃない。

●第一部は『はるのあしおと』を連想させる成長物語。声優など多くの要素が引き継がれている。『ef』でも新海誠さんがオープニングムービーを担当しており、相変わらず反則級。

●「成長」そして「夢」は、後編でも主軸となる代表的なテーマ。しかし『はるおと』から変化がないわけではなく、しっかりと発展させてもいる。例えば第一部のChapter 1は、いわゆる三角関係もの。そして彼らの関係が決着したChapter 2では、Chapter 1での現実と夢の選択を別側面から描く。テーマに「夢は何よりも大切」を掲げる作品は多い。対して『ef』は「夢だけではいけない」と厳しい現実に目を向ける。「おとぎ話」でありながらリアルと向き合う物語。

●第二部では「夢」の見方も広がっていく。前後編――各章の物語は一つに収束し、青年を約束の場所へと向かわせる。進行はほぼ一本道。ゲームとしての難易度は皆無に等しく、その印象も希薄。イメージは映画が近い。

●五人の主人公は皆、何かを生み出すことができる。それぞれ物語だったり映像だったり音楽だったりと。彼らが抱いた夢――それにより得たもの、作り出したものが、主人公とヒロインを結び付かせるという構図は好み。不要な登場人物が一人もいない群像劇。

●総じて異常と思えるほどハイクオリティで、難点を探すのも苦労するレベル。第一部はバグでムービーが再生されず強制終了されることがあるため、修正パッチを当てたほうがいい。それくらいか……。コストパフォーマンスを重視するなら、ゲーム二本分にしてはボリューム不足であることも挙げられる。とりわけ第一部は短い。


 ――備考。

●新海さんのムービーとは別に、第二部にはアニメ版スタッフの手によるムービーも挿入される。できればアニメ第一シリーズ『ef - a tale of memories.』を観てからゲームをプレイしたほうがいい。

●留意すべきはゲームのプレイ順序。アニメの第一シリーズを観るのなら「第一部→アニメ第一シリーズ→第二部」が推奨順。これは作品の発表順でもある(本編の第二部よりもアニメのほうが先)。

●アニメの第二シリーズ『ef - a tale of melodies.』(タイトルが少し違う)は、第一シリーズとは逆。ゲームをプレイしてから観るのが好ましい内容となっているからややこしい。つまり「第一部→アニメ第一シリーズ→第二部→アニメ第二シリーズ」の流れがベスト。アニメの第二シリーズを本編の第二部より先に視聴した場合、あるミスリードが致命的に損なわれてしまうため要注意。

●メディアミックス展開に力を入れたタイトルの一つで、アニメの他にも漫画やCDなど多く出ている。PS2に移植もされているし、後日談を収録したファンディスクも発売された。かなりの数があり、相当のファンでないとフォローしきれない。まずは本編のゲーム(移植版でも可)とアニメ版だけ抑えておけばOK。


 推奨度――S。


Bullet Butlers

 一言で表すなら、BB弾である。


●『あやかしびと』と同じ制作スタッフの作品。例によって男性キャラクターとバトルシーンに傾倒しまくった「銃と魔法と執事と主のファンタジーAVG」。ファンタジー世界と近代世界が融合した世界観。

●ファンタジーとしては王道中の王道。世界を救った八人の英雄――神話の時代より続く伝説。その手にその身に伝説を得た者の戦い。主人公はエルフと人間のハーフであり、彼が執事として仕えるメインヒロインは竜に変身する種族・ドラゴニュート。しかし変身能力は不完全で翼のみ。他にもドワーフ、ゴブリン、オークなど多彩なファンタジー種族が闊歩する。

●かなりの大作と言える。物語の壮大さとしても単純な長さとしても。面白いから許せるが、この面白さがないと許せないかもしれないほどに長いゲーム。

●やけに長大なシナリオは「濃い」。作り込まれた世界観の描写は臭い立つほど濃厚な緻密さで、巧妙に組み合わさった伏線は山ほどに複雑に。そうした物語の必要部分だけでも膨大なのに、余分な部分もこれまた膨大量。九割の物書きなら描写を省くであろうシーンまでも、憎たらしいほどに読ませる文章で長ったらしく濃密に記述される。

●登場人物を魅力的に描き、ほとんどのキャラに魅せ場が用意されている点は『あやかしびと』同様。今作も主人公を含めフルボイス。……プレイ時間の長大さに大きく貢献する要因となっている。

●プレイ前に修正ファイルの適用を推奨。修正ファイル適用後は一部セーブデータが利用できない場合があるらしく、長いゲームなのでやり直しは避けたい。セルマルートは最後。その前に進めてもバッドエンドになってしまう。


 ――備考。

●個人的に大好きなのが、リック&ベイルの執事・拳銃コンビ。ヒロインよりも好み。他はギュスターヴも好き。ヴァレリアルートでは圧倒的な強さを発揮する人。「○○に対しての絶対支配を可能とする」とか、そういったメタ能力は燃える。「相性の問題だ」などと言われると快感すら感じる。汎用性に欠ける反面、ある分野において究極の絶対性を発揮するのは。

●単純に「無敵」ということなら、不死身のレイスになるのかな……。ギュスターヴとは正反対でシンプルゆえの絶対性。この作品は攻略不可能と思える敵が多い。声だけで通常の三倍の力を誇るシドなど最たるもの。勝てる気がしない。

●主人公の必殺技を「悪鬼喰グール」とするセンスは異常。シナリオ担当の東出祐一郎さんはゾンビマニアとしても知られるため、ある意味では平常運転なのかもしれない。グールはゾンビと同列に語られることも多く、先に紹介した『レコンキスタ』とはゾンビつながり(CV一色ヒカルつながりでも可)。

●ノベライズ版『Bullet Butlers ~虎は弾丸のごとく疾駆する~』も発売されている。今度の執事はハーフ・ワータイガー。ドラゴニュートの主の次がワータイガーの執事となれば――「竜虎相撃つ」とでもまとめておこう。


 推奨度――S。


レコンキスタ

 一言で表すなら、ゾンビキレタである。


●活動休止したねこねこソフトのスタッフが集まり、新たに立ち上げたコットンソフトの第二作。ゲームのグラフィックにテキスト、作品全体から感じる雰囲気――それら全てが旧ねこねこソフトそのもの。日常を描いた萌え系が多いだけに、今作も毎度の路線かと思えば「ミステリアス・恋愛ADV」ときた!

●シナリオライターの筆致は少し稚拙と感じるもので、特に文章が上手いとは思わない。良くも悪くもねこねこ色のライトさ。目新しい設定はないし、ストーリー展開にも斬新さはなく、明らかに無理がある点とて散見した。――が、それでも面白い。

●二人の主人公は、最終的には四人に増え、状況に応じヒロイン視点にも切り替わる。ゲームが進行するごとに「年表」へ追加されるサブエピソード。多重視点で物語が密度を増していく。数十年、三世代に及んだ一連の物語。失ったものを取り戻そうとする者たちの苦悩と奔走――。無駄なキャラクターなぞ一人もいない。

●オープニング&エンディングテーマも特筆に値する。歌うのは飛蘭さんとYURIAさん。歌声もメロディも素晴らしく、物語を大いに表した詞とて文句なしの百点満点。

穴だらけの行動なのに結果が応えてしまうという、一番手に負えないパターンの汐見先生。このゲーム、男性陣に声はないのだけれど……彼だけはボイスが欲しかったなあ!(ネタ的に)

●ヒロインに刃物を持たせるとロクなことをしない作品。とりわけナイフに要注意。意外にも「首刈り女」こと秋月暮葉はそこまで危なくない。さすが黒髪ロング(関係ありません)、話せばわかってくれるんだ!

●と思いきや黒髪ロング幼女、主人公の愛娘(ゲーム開始時から一児の父という異色主人公がいる)槙野もみじは怖すぎるバッドエンドを演出するジョーカー。このエンドを含めて、いささかシナリオの疑問点が残ってしまうのは残念だった。

●↑のエンドが顕著だが、ミステリアスと言うよりホラーのほうが近いやも? しかしライトなのは救いとなり、極端に人を選ぶことにもなっていない。まだ萌えゲーの延長でプレイできる範囲……、……でもないな。


 ――備考。

●無駄なキャラはおらずとも、やはり一番を挙げるなら暮葉さん。物語を象徴する人物と言える。演じる北都南さんも、一人三役となれば今作を象徴する声優と言っていいかと。ファンに対しては推奨度S。

●北都南ファンに対して推奨度が大きくプラスされる、その点は『Forest』と同様。あちらは最初からSなので上がりようがないけれど……。ママ! ママ! 優しい優しいママ!(夏至の夜の改賊より)


 推奨度――B。


続・殺戮のジャンゴ -地獄の賞金首-

 一言で表すなら、ビッチゲーである。


●典型的な美少女ゲームとは何もかも違う、異彩を放ちまくる作品。「続」とありながら続編ではない。有名なマカロニウェスタンの『続・夕陽のガンマン』が名前の由来。

●ジャンルは「空想科学マカロニ大活劇」。SFとマカロニウェスタン(イタリア製西部劇)を融合させた、古めかしくも斬新な世界観が特徴。公式サイトより抜粋すると、

 マカロニウェスタンの要点とは、スタイルと方法論のみで、実のところ時代考証やリアリズムは皆無である。小道具においては謎のバルカン砲からリモコン爆弾ロボまで何でもアリ。カンフー使いの東洋人も座頭市まがいの盲目ガンマンも、平然と許容するのがマカロニ節である。
 本作では、Niθをキャラクターデザイン/原画に起用するにあたり、彼のパフォーマンスを最大限に発揮させるため、あえて舞台設定をSFとした。遠い未来、銀河の果てにある砂の辺境惑星で、人類のみならず異形のエイリアンたちまでもが、西部開拓時代そのままの暮らしを送る異世界である。交通は馬と鉄道。武器はリボルバー拳銃止まり。しかしながら未来的デザインも存在する。摩訶不思議な西部劇ワールドの誕生だ。

 同様にトンデモ西部世界観の18禁ゲームには『ANGELBULLET』があり、あちらも狼男やらジャージー・デビルやらと人外の魔物が多数登場する。どちらの制作スタンスも変態的。

●物語の中心になるのは、三人の女ガンマン。非力なヒロイン像とは完全に無縁。たとえ大勢の男に強姦されようが、そんなものは鼻で笑って流してしまう。あるいは虐殺で返上。それを苦もなくやってのける、気持ちがいいほど痛快な悪党たち。

愛や甘酸っぱい心のふれあいはなく、ただ、男をそそる色気たっぷりの女たちが破廉恥の度を超したバイオレンスで暴れ回り、ときに男にレイプされ、ときに男をレイプして、クールに、スタイリッシュに、悪逆非道の限りを尽くす。

 ビッチゲーたる由縁が、この女傑ども。……萌え? それ地球の概念だから。

●ビッチだろうがなんだろうが男など単純なもので、美人でエロいねーちゃんなら大抵好きに決まっている。欲情が抑えられないはず。否定するなら証拠を示そう――ヒロイン三人が描かれている壁紙を。扇情的ではなかろうか!?

●虚淵玄シナリオのゲームでは珍しいことに(唯一?)後味が良く娯楽性も高い。レイプシーンでさえも笑わせてくる。まるで映画を観ているかのようなストーリーは、独特の「虚淵節」も十分に堪能できる。

●シナリオ展開は一本道ながら、バッドエンドは十種類と多い。これまた特徴的で、それぞれに「ガンマン十戒」というものが対応している。「他人にものを頼むな」「決して他人を信用するな」といった訓戒を、緒方賢一波動拳さんが重々しく語る。

●フルコンプリートをするとCGが一枚追加。これはニトロプラス作品では毎度のこと。バッドエンドを回収する理由の一つでもある。あまり時間は取らないので(バッドは選択肢を選んでから一分もかからず終わる)手間でもないはず。

●システム面に難が二点。まず「ガンマン十戒」。自動メッセージ送りにしていると、せっかくの波動拳ボイスが途中で切られる。そして「ゲーム中の強制終了」。これはディスクプロテクトとの相性問題で推奨環境以下の場合に発生することが多い模様。ゲーム進行中にディスクチェックが動作、そのせいで落ちるということらしい。公式サイトからプロテクト障害対応パッチをダウンロード推奨。


 ――備考。

●十時間ほどでクリアでき、時間がない社会人などにも薦められる。全体的にクオリティの高い傑作で、システム以外に不満は一切なかった。……訂正、もう一つだけ。あの狂ったオープニングムービー、中毒性が高すぎて頭から離れん! ヘーイヘイヘイヘーイー。

●初回限定版「皆殺しパック」は、名前も特典もいい感じにイカれている。スーパーマカロニ銃って……。


 推奨度――A。


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多忙で放置しがちになってしまったブログです。久々にエロゲーやりたい。

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